投稿

ラベル(医学教育)が付いた投稿を表示しています

医療は技術だけではない。佐賀大学総合診療部40周年同門会で再確認したこと

イメージ
先日、 佐賀大学総合診療部 の同門会に参加してきました~。 この同門会は、佐賀大学総合診療部に縁のある医師が集まる会です。今回は初代から4代目までの教授がそろい、私自身がお世話になった2代目小泉俊三教授・3代目山下秀一の教授とも久しぶりにお話しすることができました。 普通の学会では最新の研究や診療について議論することが多いのですが、同門会では少し違います。同じような環境で学び、それぞれ異なる道を歩んできた先生方が、自分たちの経験や考えを語り合う場です。診療技術だけではなく、「医師としてどう成長してきたか」「どんなことを大切にしてきたか」といった話を聞ける、とても貴重な時間でした。 今回、最も印象に残ったのは、教授の先生方が口をそろえて「教育に携われて良かった」と話されていたことです。(まあ、当然といえば当然) 私は教授という立場の方であれば、研究や論文、学術的な成果について語られるのではないかと想像していました。しかし実際には、後輩を育て、多くの医師の成長を見届けてきたことを、何よりの喜びとして話されていたのです。 更に、「医師として一番大切なことは何だと思いますか?」という少し抽象的な質問をしてみました。この質問、こんなところじゃないと聞けないですよね。博識な教授から「難しい質問だね」と笑いながら答えていただきました。博識な教授に難しい質問と言わせてしてやったり感を勝手に持ちましたが。 なんとお二人とも、論文の数や肩書きではなく、「臨床医として誠実であること」が何より大切だということです。表現はお二人とも違いましたが本質はそこだと勝手にまとめました。 患者さんの話を丁寧に聞くこと。困っている人に手を差し伸べること。責任を持って最後までフォローすること。そうした一つひとつの積み重ねこそが、医師として最も大切なのだと改めて感じました。 私自身も今回の同門会を通して、改めて心に留めたいとじーんと思いました。どれも特別なことではありません。しかし、こうした積み重ねが医療の質を支えているのだと思います。 また、今回の同門会では、診療そのものよりも「教育(哲学も含む)」や「組織づくり」について考える機会が多くありました。患者さんからは見えにくい部分ですが、クリニックが良い医療を提供し続けるためには、診療技術だけでは十分ではありません。 スタッフが学び続けられる環境をつくること...

学生も教員もタイパが大切 地域医療実習ミーティングに参加して感じたこと

イメージ
昨日は、佐賀大学の地域医療実習ミーティングに参加してきました。 今回のテーマは、医学生が地域で学ぶ8週間の実習について。かつては2週間ずつ、大学病院と地域病院に分かれていたものが、今年度からすべて地域での実習になったそうです。背景には、厚生労働省の方針転換と、地域医療を担う人材をより実践的に育てたいという大学の意図があります。 昔は佐賀記念病院の時に実習担当者として学生を教えていましたので、なんとなく状況はわかります。 熱男 会の冒頭で感じたのは、山下先生(臨床実習コーディネーター)の熱量! 教育の現場を本気で変えようとする姿勢、学生に「地域で生きる医療」を体験してほしいという思いが、言葉の端々から伝わってきました。 参加型の実習、つまり 「見学ではなく現場で動く」 ことが求められている――その空気を、会場全体が共有していたように思います。 やれるのか!? 一方で、クリニックの立場から考えると、現実的な課題も見えてきます。 教育には時間も人も必要です。 医師やスタッフが学生に関わるほど、当然ながらリソースは削がれますし、オペレーションの効率(タイパ)との両立も課題です。学生もタイパを考えていれば、教員もタイパを考えています。お互い忙しい…。 患者さんの待ち時間が延びたり、採血などの実技で安全面に気を遣う場面も出てくる。 私自身、会議の中ではつい「難しいのでは」と慎重な意見を述べた部分もありました。というより、難しいよね…を連呼していました。あぁ、ポジティブにいきたい…。 しかし、それでもやはり教育の力は大きいと感じています。 学生が現場に入ると、スタッフの姿勢が変わります。 「教える立場」に立つことで、いつもの業務にも新しい緊張感と誇りが生まれます。 また、実習を通して若い医師とつながることは、地域にとっての未来投資でもあります。 医師が足りない時代だからこそ、地域で育て、地域に根ざしていく流れを作ることが大切だと思います。 タイパ(タイムパフォーマンス:時間あたりの効率性) 江口医院としては、「タイパの良い教育」、つまり効率的で現実的な教育の形を模索したいと考えています。 たとえば、問診の補助や心電図の取得、電子カルテの記録補助(いわゆるシュライバー的な役割)など、患者さんの安全を守りながら学びが得られる方法。 そうした実践の積...

佐賀大学での在宅医療講義を通じて感じたこと — 地域医療教育に携わる想い

イメージ
先日、佐賀大学より在宅医療に関する講義の依頼を受け、当院院長が総論を担当しました。地域医療に携わるクリニックとして、大学教育に関わる機会は大変貴重であり、今回の講義を通して、私たちの取り組みや在宅医療の重要性を改めて確認することができました。 講義は訪問診療をテーマにした初めての内容で、所要時間は60分、スライドは約50枚を使用しました。対象は医学部の学生さんで、総論を中心に講義する形をとりました。 Q&A:講義の背景と準備 Q: 今回の講義を依頼された経緯は? A: 「大学経由で依頼がありました。これまでは開業医のキャリアパスについて講義することはありましたが、訪問診療をテーマに講義するのは初めてです。講義では、総論中心で、よくあるパターンを学生に伝えることを意識しました。」 Q: 準備はどのように行いましたか? A: 「在宅医療の重要なポイントや基本的な知識についてはAIに整理してもらいました。一方で、心理面や生活面、患者さんの医療以外のニーズに関しては私自身が加筆しました。AIの整理と私の経験を融合することで、学生が理解しやすい講義資料を作ることができました。」 Q: 学生の反応はいかがでしたか? A: 「質問は特にありませんでしたが、戸惑った表情で考え込む学生もいました。実際の患者さんとのやり取りや言葉にすると、興味を持ったようで、まなざしがこちらに向けられました。また、講義で提示したQRコードを数人の学生さんが写真に撮る様子もあり、関心を示してくれたことを感じました。」 在宅医療の核心:医療とケアの両立 Q: 学生に伝えたいことは何ですか? A: 「在宅医療は、医療だけでは成り立ちません。医療とケアの両立が非常に重要であり、場合によってはケアを優先する価値観を持つことも大切です。特に病院中心の教育を受けた学生さんは、医療ベースで頭が固まりがちです。『ケアが患者の生活や満足感に直結する』ということを理解してほしいと思います。」 Q: 具体的なケースはどのようなものですか? A: 「講義では、よくあるパターンを紹介しました。たとえば家族の介護疲れや、患者さんや家族が困惑しやすい状況です。こうした場面で、医療だけではなく、生活支援や心理面への配慮が必要であることを理解してもらうことが目的です。」 講義の中で感じたこと 講義を通して、...

2025/09/11 ケースカンファを開催しました

イメージ
さて、今月のケースカンファです! 2025/09/04開催予定が、急な往診が入って11日開催となってしまいました。ところが当日も急な往診が入って、また延期かぁ~と思ったところ全員戻ってきての参加になりました。 医師3人、看護師5人のバトル禁止のまろやかケースカンファですよ! 今回のケースカンファで自分が得られた学びは、ざっとまとめると次の3点です。 多分、看護師さんは看護師さんの視点の違う学びがあるんじゃないかな? 長年関わった人の意見の重み 担当者の固定しすぎ功罪 家族以外の介護者の余力もモニタリングする こうした気づきは、普段の診療ではなかなか表に出てこないものです。ケースカンファに参加することで、チーム全員の思考や経験を一度に吸収できるのが大きな魅力です。参加希望の方は、ぜひ次回の開催に注目してください。 ケースA:延命治療をするかどうかで意見が分かれた場合 仮想のケースですが、患者さんは高齢女性で、延命治療を望むかどうかで家族内で意見が分かれました。妻は自然な経過で見守りたいと考え、子ども世代は積極的治療を希望しました。こうした状況では、医師としては、どちらかに肩入れしにくいのですね。基本的にはキーパーソンにお話をして、家庭内で話してもらう。ただし、 長年関わってきたケア提供者の意見 を「尊重」することが非常に重要です。 自分が感じたのは、「結果論として正しかったかどうか」は後から分かるとしても、その人がどう考えてその意見に至ったかを理解すること自体が、チーム全体の学びになるのではないかと考えました。もう少し意見をシェア出来ると良かったかもしれません。ここで得られたのが学び①、「長年関わった人の意見の重み」でした。 ちなみに、このご時世パターナリズムを使用した意思決定支援は医師は苦手になってきています。説明義務違反がバズっている今日このごろですが、最近の医師はインフォームド・コンセント、意思決定支援が身についているので、「あんたは入院!!」みたいなパターナリズムな言動は不慣れでストレスで、ハイリスクだと認識するんですよね。そこはコメディカルのみなさんも知ってほしいポイントです。 ケースB:本人の希望と介護者の負担のバランス 次に、本人は「好きにさせてほしい」と考えていたケースを想定します。しかし、介護者やヘルパーの負担は既に限界に近く、日常生活...

“良い臨床家を諦める”という覚悟 ──佐賀大学総合診療部同門会に参加して

イメージ
土曜の早朝は訪問診療、午前は外来へ。そして昼過ぎ、歩いてマリターレ創世佐賀へ向かいました。5分程度の距離なのですが、一瞬で汗だくになりましたね。疲れてはいましたが、この日の「佐賀大学総合診療部同門会」はとても楽しみにしていました。私を育ててくれた医局や先輩方。今も現場の最前線で奮闘する仲間たち。その姿に触れておきたいと思いましたし、課題の共有ができれば嬉しいなと考えつつ参加しました。 同門会では、研究の一般講演と、佐々木先生の特別講演がありました。本村先生の非感染性炎症性疾患についての研究も臨床にすぐに応用できそうな内容で刺激的でした。また現在当院にも関わっていただいている香月先生と、東邦大学総合診療部の佐々木教授の講演もありました。  香月先生の発表では、 大学での研究をチームで行う というお話。研究と臨床、研究と学生、研究と…と様々なポイントでコラボレーションしつつ、研究マインドを育てているとのことでした。そのかいもあって英語の論文は毎年20本発表できている、佐賀大学の中でもまずまず発表できている方だとのことでした。 「一人一症例にに取り組むことを課題としている!」とプレッシャーが会場内に響き渡りました(笑)。その積み重ねが教育にも、研究にもつながっていく。研究者としては、若手に学位取得の道を提示しながら、チームで支える姿勢を強調されていたのがとても香月先生らしく、背筋が伸びる思いでした。  その後の講演で登壇されたのが、東邦大学の佐々木先生でした。 タイトルは 「なぜ大学で総合診療をやるのか」 。 一番、なるほどと共感したフレーズは、  「私は“良い臨床家であること”を諦めた。」  この覚悟はすごい!ことだと思いました。大学病院より市中病院のほうが総合診療医の能力は正直生きるんですよね。臨床能力って言うのはある意味医師のプライドの一つではあるのですが、割り切れるところが心より凄いと思いました。いや、ジレンマを感じているとのことでしたので、割り切れてないのかもしれませんが。 大学病院という環境で、研究・教育・臨床の“ジャグリング”を続けるなか、自分自身の臨床力が低下していく実感と向き合いながら、それでも「育てる」ことを選び続ける──。これは並の覚悟ではありません。ただし、教育のスキルっていうのは、医師のキャリアでいうと汎用性が乏しいんですよね(現...