プロである教師にはストレスマネジメントが必要であーる|ストレスコーピング理論から学ぶ「自分を守る方法」
さて。今回のブログはストレスコーピング理論。プライマリ・ケア医程度のものが、ストレスについて語るとはのう…と精神科の先生から怒られそうな気もしますが、プライマリ・ケア医としての予防としての感覚、産業医としてのストレスマネジメント、そして、公認心理師としての学びをミックスしてお伝えしたところです。
教員の先生方に
ストレスコーピングについて
お話ししました
「先生は大丈夫です」と言う人ほど、本当に大丈夫なのか
きっかけは、以前から関わりのあった先生から「ストレスへの対処について話してほしい」というご依頼をいただいたことでした。「Yes!勿論です!」と言って受けたのは良かったんですが、よくよく考えてみると少し緊張しました(ストレス!!)。
というのも、教員の先生方というのは、言ってみれば「人に教えるプロフェッショナル」。そんな先生方に、自分がストレスについて教える!?ということで、「どう伝えたらいいのだろう」と考えました。
ただ、準備をしていく中で、改めて感じたことがあります。それは、先生方も一人の人間であり、当然ストレスを感じることがあるということです。そして、むしろ責任感が強い人ほど、自分の疲れに気づきにくいことがあります。
教員の仕事は、外から見える以上に負担が大きい
教員の仕事というと、「授業をする仕事」というイメージを持つ方もいるかもしれません。しかし、実際にはそれだけではありません。授業準備、生徒対応、保護者対応、学校行事、書類作成、同僚との調整など、多くの仕事があります。
もちろん、私は学校現場のすべてを知っているわけではありません。教育現場には、私には見えていない大変さもたくさんあります。ただ、産業医として働く方々と関わる中で感じるのは、長時間労働や責任の大きさが健康に影響することがあるということです。
調べてみると、教員の労働時間は非常に長く、開業医の労働時間と近い水準という調査もあります。もちろん仕事内容は全く違いますけど。ただ、「人を支える仕事」であること、そして常に責任を背負っていることには共通点がありますよね。
「休憩時間」のはずなのに休めないという現実
先生方の負担を考える時、時間だけではなく「質」も大切だと思います。
びっくりしたことが昼休みです。本来であれば休憩時間ですが、子どもたちと一緒に食事をしたり、見守りをしたりしながら過ごしているケースもあります。これはもちろん教育活動として大切な役割では!?「完全に仕事から離れる、休憩時間なのか????」と驚きました。
看護師さんが食堂で食事をしながら患者さんの相談を受けたり見守りしていたら、それは本当に休憩なのか。
「絶対に休憩時間としてカウントされません」というか、電話番しながらの休憩時間も休憩と認められていないのに、子供を見ながら休むとは!?そう考えると、休む時間というものの重要性を改めて感じます。
教員のストレスで多いものとは
一般的に、仕事のストレスは大きく3つに分けられると言われています。
・仕事量の問題
・仕事の質や責任の問題
・人間関係の問題
教員の場合、これに加えて特徴的なのが、保護者対応や生徒対応ではないかと思います。まあ、営業職であれば避けて通れないものでもあります。ただ、義務教育ってところがまたちょっと違った関わりになりますよね。
また、子どもたちの成長に関わる仕事だからこそ、簡単には割り切れない場面もあります。「どう対応するのが正解なのか」「もっと良い関わり方があったのではないか」そう考えてしまう先生もいるのではないでしょうか。
真面目な人ほど、自分のストレスに気づきにくい
診療をしていて感じることがあります。「大丈夫です」「まだ頑張れます」そう言いながら、体にはサインが出ている方がいます。例えば、眠れない、動悸がする、めまいがする、喉が詰まる感じがする、以前より集中できない。こうした症状です。
本人としては「まだ大丈夫」と思っていても、体が先に反応していることがあります。特に責任感の強い方ほど、限界まで頑張ってしまう傾向があります。
ストレスコーピングとは「対処方法を増やす」という考え方
今回の講演では、ストレスコーピング理論についてお話ししました。簡単に言うと、ストレスに対する対応方法を考えることです。ポイントは、「ストレスへの対処方法は一つではない」ということです。代表的なものとして、
問題焦点型コーピング
ストレスの原因そのものに働きかける方法です。例えば、「仕事量が多すぎる」という場合、仕事の優先順位を整理する。周囲に相談する。役割分担を見直す。といった対応になります。
情動焦点型コーピング
ストレスによって生じた感情を整える方法です。リラクゼーション、運動、睡眠、趣味、人との会話などがあります。
そのほかの対処方法
認知行動療法の考え方や、表情を変えることで気持ちに影響するという顔面フィードバック理論などもあります。
大切なのは、「これだけが正解」と思わないことです。一つ試して合わなければ、別の方法を試せばいい。その選択肢を持っていること自体が、自分を守る力になります。
例えば、こんな先生の場合
例えば、40代の先生がいるとします。毎日忙しく、生徒対応や保護者対応に追われています。最近、「朝起きても疲れが取れない」「仕事のミスが増えた」「以前よりイライラする」という変化が出てきました。この時に、「もっと頑張らないと」だけで乗り切ろうとすると、さらに負担が大きくなる可能性があります。まず、「自分は今、少し余裕がなくなっているかもしれない」と気づくこと。
そして、誰かに相談する。仕事を整理する。少し休む時間を作る。自分に合った方法を探す。そうした小さな対応が重要になります。
周囲が気づけるサインもあります
本人だけではなく、周囲も変化に気づくことがあります。例えば、遅刻が増える、仕事のミスが増える、集中力が落ちる、以前より元気がない。こうした変化です。もちろん、一時的な疲れは誰にでもあります。
ただ、長く続く場合には、「チームとして支える」という視点も大切になります。「今日は少し早く帰った方がいいのでは」「何か手伝えることがありますか」そんな一言が助けになることもあります。
ストレスは、ただ我慢するものではない
ストレス対策というと、「気分転換しましょう」「リラックスしましょう」という話になることがあります。もちろん、それも大切です。ただ、原因を整理せずに、ただ我慢したり、愚痴だけで終わったりすると、十分な解決につながらない場合もあります。
変えられる問題なら、少しずつ向き合う。変えられない問題なら、受け止め方や距離の取り方を考える。その両方を使い分けることが大切だと思います。
7つの習慣でいう、関与と関心の輪ってやつです。
江口医院が大切にしていること
私が医療の中で大切にしているのは、症状だけを見るのではなく、その背景を見ることです。ストレスによる体調不良の場合も、仕事の問題なのか。家庭の問題なのか。本人の体調なのか。一つの原因だけとは限りません。だからこそ、話を聞く時間が重要になります。もちろん診療時間には限りがあります。しかし、何回かに分けながらでも、その人自身が「本当は何に困っているのか」を一緒に整理していくことが大切だと考えています。
勿論、専門的なカウンセリングがあったほうが良いな~と考えたときにはご紹介することもありますね。大きなイベントでなくてもストレス反応が強い場合は、相談できる先があったほうがやっぱり良いと思います。
人生、いろいろ(島倉千代子的)。あるから。
先生方が元気でいることは、子どもたちの未来につながる
教員という仕事は、多くの子どもたちに影響を与える仕事ですよね。だからこそ、先生自身が健康でいることも、とってもとっても大切です。ストレスを感じることは、弱いことではありません。人として自然な反応です。
大切なのは、自分のストレスのサインに気づき、自分に合った対処方法を持っておくことです。今回の講演が、先生方自身の健康を考えるきっかけになればと思っています。
健康って体の予防も大切ですが、心の予防も大切ですよね。
コメント
コメントを投稿