「また話を聞きたい」と言っていただけた健康講座――ほっとセミナー開催報告


暑い!暑すぎる!訪問診療を終えて、車に戻ったときの灼熱感…。そんな暑さの中、熱いセミナーで講演してきました。 

健診結果を見ても、どうすればよいか分からない

健康診断を受けて、結果の用紙をもらう。数字を見て、「うえー少し高いな」「去年とあまり変わらないな」と思う。紹介状が入っていれば病院へ行くけれど、入っていなければ、まあ、そのままにしておく。そういう方は、実際には少なくないと思います。

今回、佐賀新聞社とメガネのヨネザワさんとの共催で、市内の地域住民の皆さんを対象に「ほっとセミナー」を開催しました。COI:あり。父のメガネはヨネザワです。当院の新聞は佐賀新聞です。


以前から、クリニックの診察室だけではなく、地域の中で健康についてお話しする機会が必要だと感じていました。ちょうど知人から講演の機会をご紹介いただき、今回お引き受けすることになりました。

テーマは、健康診断の結果の見方です。

血圧、血糖値、コレステロール、腎臓の数値などを、どう受け止め、次の行動につなげるかについてお話ししました。

実は健康診断を受けても健康にはならないんですよ。その後の行動が大切なんです。「災い転じて福となす!」が大切なんですよ。

一つの数字だけを見ても、健康状態は分からない

健康診断の結果について、多くの方が一つひとつの数字に注目します。血圧が高い。コレステロールが高い。血糖値が高い。もちろん、それぞれの数字を見ることは大切です。ただ、実際の診療では、一つの数字だけで治療方針を決めているわけではありません。

年齢、喫煙の有無、糖尿病や腎臓病の有無、これまでに心筋梗塞や脳梗塞を起こしたことがあるかなど、さまざまな情報を一緒に見ます。そのうえで、「この人が将来、心筋梗塞や脳卒中を起こす危険性はどの程度なのか」を考えます。

大切なのは、数値を一つずつ管理するというより、病気になる危険性を全体として下げていくことです。

インターネットで検索すると、高血圧については高血圧、コレステロールについてはコレステロールと、項目ごとに説明されていることが多いと思います。ただ、実際の体は項目ごとに分かれているわけではありません。血圧、血糖、コレステロール、腎機能、生活習慣などを横断的に見て、優先順位を考えることが必要です。

今回のセミナーでは、その点が地域の皆さんに十分伝わっていなかったのだな、と改めて感じました。

クイズと話し合いを取り入れたセミナー

今回の講演は、医師が一方的に話し続ける形式にはしませんでした!というか、自分がする講演やレクチャーはほとんどアクティブ・ラーニングを積極的に入れるスタイルです。途中でクイズを出したり、隣の方と話し合ってもらったりする形を取り入れました。

午後の眠たくなりやすい時間帯でしたが、皆さんには積極的に参加していただきました。(自分が学生だったら寝ていると思うからこそのアクティブ・ラーニング)

講師の話を聞くだけでなく、「自分はどうだろう」「隣の人はどう考えたのだろう」と話すことで、健康診断の結果が少し身近なものになったのではないかと思います。

参加者の方からは、次のような感想をいただきました。参加された皆さんからは、健診結果は一つひとつの数値だけで判断するのではなく、全体を見ながら考えることが大切だと感じた、という趣旨の声が多く聞かれました。また、健診結果を受け取った後、分からないままにしておくのではなく、気になることをかかりつけ医に相談してみようと思った方もおられたようです。

講演の進め方についても、参加者同士で話す時間があり、講師との距離も近く感じられたことから、一方的に話を聞くだけではない雰囲気を楽しんでいただけたようでした。

内容は少し難しい部分もありましたが、できるだけ身近な言葉や具体例を用いたことで、おおむね分かりやすかったとの反応をいただきました。今回初めて健康講座に参加された方もおられ、また同じような機会があれば参加したい、という前向きな感想も寄せられました。こうした声をいただけたことは、率直にうれしく思います。

一方で、「資料が欲しかった」といったご意見もいただきました。講演をしたから終わりではなく、聞いた内容を家に帰ってから振り返り、実際の行動につなげられるところまで設計する必要があると感じました。

健康診断を受けただけで満足していませんか

健康診断は、受けること自体が目的ではありません。健康診断で分かったことを、次の行動に変えることが大切です。とはいえ、いきなり「毎日運動してください」「食事を変えてください」「すぐに病院へ行ってください」と言われても、なかなか動けない方もいます。

医師から怒られそうだと感じる方もいるでしょう。自分の生活を否定され、今までの心地よい状態を変えるように強制されるのが嫌だ、という気持ちもあると思います。

だからこそ、本人が何なら変えられそうかを一緒に考えることが必要です。例えば、「運動してください」と伝えるだけでは、具体性がありません。今はどの程度歩いているのか。運動できる時間はあるのか。膝や腰に痛みはないか。どのような運動なら嫌ではないのか。そういったことを聞きながら、「まずは夕食後に10分歩く」「週に2回だけ体操をする」といった、実行できそうな目標を一緒に作っていきます。

健康づくりは、正しいことを伝えれば必ず実行できる、というほど単純ではありません。正しさだけではなく、その人の生活に入る形にすることが大切です。

例えば、こんな方がいたとします

70代の方で、毎年健康診断を受けているとします。血圧は少し高い。コレステロールも少し高い。血糖値も正常範囲を少し超えている。ただ、本人は元気です。特に困っている症状もありません。結果の用紙には、いくつも注意事項が書いてありますが、どれも緊急という感じではない。「紹介状が入っていないから、まだ大丈夫だろう」そう考えて、結果を引き出しにしまってしまいます。ところが、この方が喫煙をしていて、家族に心筋梗塞を起こした人がいて、腎機能も少し低下していたとすると、話は変わります。

一つひとつの数値は少しの異常でも、全体として見ると、将来の心筋梗塞や脳卒中の危険性が高い可能性があります。反対に、ある一つの数値が基準値を外れていても、すぐに薬が必要とは限りません。何を優先し、どこから改善するのかは、人によって違います。その判断を一緒に行うのが、かかりつけ医の役割だと考えています。

検査が怖くて、受診を先延ばしにする人もいる

健診後の受診を先延ばしにする理由は、生活習慣を注意されることだけではありません。胃カメラや大腸カメラなど、負担がありそうな検査を勧められるのが怖い、という方もいます。確かに、楽な検査ではない場合もあります。ただ、必要な検査を先延ばしにすることで、早く見つけられたはずの病気が進行してしまう可能性もあります。最近は、できるだけ苦痛を少なくするための方法もあります。

検査を受けるかどうかを一方的に決めるのではなく、なぜ必要なのか、受けなかった場合にどのようなことが考えられるのか、どのような方法なら受けられそうかを相談することが大切です。

余談だけど

今回のセミナーでも、健康診断の話を中心にしていましたが、参加者の方から熱中症についての質問が出ました。皆さんが気にしていることは、こちらが用意したテーマだけとは限りません。その場で生まれた質問に答えながら、今の生活に必要な情報を一緒に考える。そうしたやり取りも、地域の健康講座の大切な役割だと思います。

健診結果を見たら、小さな行動を一つ

健康診断の結果を受け取ったら、まずは異常値をすべて完璧に理解しようとしなくてもよいと思います。「この数字は去年と比べてどうなのか」「自分の場合、何を一番優先すればよいのか」「すぐに受診が必要なのか、それとも生活を少し変えて様子を見てよいのか」こうした疑問を、かかりつけ医に相談してみてください。

健康診断の結果表を持参していただければ、数値だけでなく、これまでの病気や生活の状況も含めて考えることができます。すべてを一度に変える必要はありません。まずは一つ、できそうなことを決める。それで十分な場合もあります。

普段の診察でも、セミナーでも、考え方は同じです

今回のセミナーでお話しした内容は、特別なものではありません。普段の診察室で患者さんと話していることと、方向性はほぼ同じです。数値を見て終わるのではなく、その人の生活を聞く。何を大切にしているのかを聞く。どこまでなら変えられそうかを考える。そして、医学的に必要なことと、実際に続けられることの間を一緒に調整する。

当院では、医師の正解を一方的に押しつけるのではなく、できるだけ患者さんに合った健康づくりの方法を提案したいと考えています。

ただ、健康を変えたいという気持ちがまったくない場合には、できることは限られます。医療者が代わりに運動したり、食事を変えたりすることはできません。少しでも「このままでよいのだろうか」「何か一つなら変えてもよいかもしれない」と思ったときに、その気持ちを具体的な行動に変えるお手伝いをする。それが、私たちの役割だと思っています。

(引用:マンガ「ジョジョの奇妙な冒険」)

禍福終始を知って惑わざるが為なり。健康診断が悪くとも、乗り越えることさ!

また地域の皆さんと話せる機会があれば

今回のセミナーでは、皆さんで話をしながら、健康診断について「なるほど、そういう考え方なのか」と、ざっくりつかんでいただけたのではないかと思います。

新聞にもセミナーの様子を掲載していただきました。

https://www.saga-s.co.jp/articles/-/1757209?shem=dsdf,sharefoc,agadiscoversdl,,sh/x/discover/m1/4#goog_rewarded

写真が少しにやけて写っていたことは気になりましたが(笑)、地域での取り組みを知っていただく機会になったのであれば、ありがたいことです。

今後、次々と講演を行いたいというわけではありません。ただ、地域の方と健康について話せる機会があれば、またお引き受けしてもよいかなと思っています。

健診結果をそのままにしている方。気になっているけれど、病院へ行くほどなのか迷っている方。何から始めればよいのか分からない方。そうした方が、結果表をもう一度開き、小さな行動を一つ考えるきっかけになればうれしく思います。

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