「できれば15時までに病院へ」緊急入院をスムーズにするために知ってほしいこと


今日も急変あり、外来も悩ましい症例もあり、忙しい日でした。外来患者数だけ見ればそんなに忙しいはずはないのに、このくたびれ感はどこから!?(あなたの風邪はどこから?的な)余談ですが、そう言えば、テレビ線がなくなって数年…。テレビコマーシャルを見なくなったので、新しいネタが入ってきません。

緊急入院は、救急車を呼べば終わりではありません。

「入院が必要なら、すぐ救急車を呼べばいいのではないですか」

患者さんやご家族からすると、そう思われるのは自然なことかもしれません。

具合が悪い。家では見られない。先生も入院が必要だと言っている。それなら、救急車を呼んで病院へ行けばよい。まー、表面だけを見ると、非常に単純な話に見えます。

しかーし、実際の緊急入院は、それほど単純ではありません。

実は、医師は、患者さんの前で診察をしながら、緊急性と重症度を考え、疑われる病気を考え、もともとの生活状態と今の状態を比較しています。そのうえで、どの病院にお願いするのがよいのか、どの方法で移動するのが安全なのか、何時までに到着すれば必要な検査を受けられるのかを同時に考えています。

今回は、クリニックから緊急入院をお願いするときに、私たちが何を考えているのかを書いてみたいと思います。

まず考えるのは「緊急性」と「重症度」です

患者さんを診たとき、まず考えるのは緊急性と重症度です。当然です。

次に、どのような病気が起きている可能性があるのかを考えます。そして、それと同じくらい大切なのが、もともとのADL、つまり普段どの程度動けていたのかという情報です。

例えば、同じ肺炎でも、普段どおり歩けて、食事が取れて、酸素の値も保たれている人であれば、外来治療ができる場合があります。一方で、熱はそれほど高くなくても、立ち上がれない、食事が取れない、トイレに行けない、家族だけでは介助できないという状態であれば、自宅に帰ることが難しくなります。

つまり、病名だけで入院を決めているわけではありません。病気の重さと、その人が生活を続けられるかどうかを一緒に考えています。

肺炎ではA-DROPという重症度判定の目安があります。心不全では、酸素化が保たれているか、呼吸苦が強くないか、動悸や息切れによって日常生活ができなくなっていないか、といった点を見ます。

ただし、どの病気でも、点数だけで決められるわけではありません。

検査の数字がそれほど悪くなくても、家に帰れば生活できないということがあります。逆に、検査値に多少の異常があっても、生活が保たれ、外来で安全に治療できる場合もあります。

検査結果が出る前に入院をお願いすることもあります

「血液検査の結果が出ていないのに、診断がついていないのに、なぜ入院が必要だと分かるのですか」そう思われることもあります。

もちろん、検査結果は大切です。ただ、検査結果を待っている間に状態が悪くなる可能性がある場合や、結果にかかわらず自宅療養が難しい場合には、先に入院先を探し始めます。例えば、強い低酸素がある、血圧が低い、意識が悪い、立てない、食事が取れない、家族だけでは介助できないといった場合です。こうしたときには、血液検査の結果がどうであっても、病院での評価や治療が必要になる可能性が高いと考えます。

江口医院では、午前中に採血した血液検査の結果が15時頃に判明することがあります。ただ、15時から入院先を探し始めると、紹介先に着くのが夕方以降になり、当日中の検査が難しくなることがあります。

ここには、クリニックとしての悩ましさがあります。検査結果を確認してから動きたい。一方で、結果を待つことで病院での検査が翌日になってしまうかもしれない。そのため、明らかに入院の可能性が高い場合には、検査結果を待たずに受入先を探し始めることがあります。

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救急車を呼べば、すぐ病院へ行けるとは限りません

緊急入院というと、すぐに救急車を呼ぶイメージがあると思います。ただ、実際には、私たちは受入先を先に探すことが多いです。救急車を呼んでも、搬送先が決まっていなければ、救急隊が患者さんの情報を集め、病院へ連絡し、受け入れ可能か確認する必要があります。受け入れ不可能であれば別の病院へ、また駄目なら別の病院へ…。救急車が来たからといって、そのまますぐ出発できるとは限りません。

そのため、バイタルが比較的安定している場合には、先に病院へ入院依頼を行い、受入先が決まってから救急車を呼ぶことがあります。

一方で、救急車を先に呼ぶ場合もあります。例えば、ひどい低酸素がある場合です。院内で十分な酸素供給ができない場合には、救急隊に早く来てもらい、酸素投与を開始してもらうことがあります。

つまり、救急車を先に呼ぶか、受入先を先に決めるかは、患者さんの状態によって変わります。

救急車は重症患者のための重要な資源です。ただ、普通のタクシーでは移動できず、介護タクシーも急には手配できないという患者さんもいます。バイタルは安定しているけれど、立てない。車椅子から自家用車へ移乗できない。家族だけでは運べない。このような患者さんの移動手段は、現実には非常に難しい問題です。特に土曜日の午後や夕方は、介護タクシーが見つからず、施設車両も使えないということがあります。家族は土曜は動きやすいんですけどね。

医学的には入院が必要なのに、移動手段がないために対応が遅れる。これは、現場でよく感じる違和感の一つです。

入院先は「近い」「有名」だけでは決められません

佐賀市周辺は、比較的複数の病院から紹介先を検討できる地域だと思います。ただし、どの病院でも同じ診療ができるわけではありません。感染症、心不全、呼吸不全、骨折、意識障害では、それぞれ必要な診療科や検査設備が異なります。また、緊急入院では、実際は地域包括ケア病床へ直接入院することは難しく、まずは急性期病院で評価を受ける必要がある場合が多いです。

私たちは、次のようなことを考えながら紹介先を選んでいます。

  • どの病気が疑われるか

  • どの診療科が必要か

  • 必要な検査や治療ができるか

  • その病院に通院歴や入院歴があるか

  • その日の受入体制があるか

  • 患者さんが移動に耐えられる距離か

  • 退院後の生活まで考えたときに適切か

患者さんやご家族から、「あの病院がいい」「この病院は嫌だ」と言われることもあります。一つの病院を避けるだけであれば、別の候補を探せることもあります。ただ、「ここも嫌、あそこも嫌」と候補が減っていくと、徐々に遠い病院しか残らなくなります。遠い病院に入院すると、家族の負担も大きくなります。病状説明を聞きに行く。着替えや日用品を届ける。お見舞いに行く。退院時に迎えに行く。退院後の通院を続ける。病院選びは、その日の入院だけで終わる話ではありません。

できるだけ患者さんとご家族の希望は尊重したいと思っています。ただ、緊急時には、病院の機能と受入可能性を優先しなければならないことがあります。

できれば15時までに病院へ着いてほしい理由

さて本題。緊急入院が必要になった場合、できれば15時頃までに病院へ到着した方がよいと考えています。救急病院では、到着後に血液検査やCT検査を行うことが多いです。血液検査には結果が出るまで1時間程度かかります。CT検査も、撮影、読影、結果の確認まで含めると時間がかかります。つまり、17時頃までに検査と判断を終えようとすると、15時頃までには病院へ到着していた方が動きやすくなります。

夜間でも検査はできます。ただし、日中と同じ体制で、同じようにすべての検査がすぐ行えるとは限りません。専門医が不在であったり、予定検査が終了していたり、緊急性の高い検査だけに限定されたりすることがあります。

「家族が仕事を終えてから連れて行きます」って、そのお気持ちはよく分かります。急に仕事を休むことが難しいこともあります。ただ、数時間遅れることで、その日のうちに検査や治療方針が決まらず、患者さん自身の不利益になることがあります。私たちが早い時間の受診をお願いするのは、病院やクリニックの都合だけではありません。できるだけ早く、よりよい医療を受けてもらうためです。

病院への電話では、病名以外のことも伝えています

入院依頼の電話では、疑っている病気、現在のバイタル、重症度、これまで行った治療を伝えます。ただ、それだけではありません。可能であれば、次のようなことも伝えています。

  • もともとのADL

  • 現在どの程度動けなくなっているか

  • 認知症に伴う行動や心理症状

  • ACPの内容

  • 本人がどのような性格か

  • 家族の支援体制

  • 入院中に起こりそうな問題

  • 退院の妨げになりそうな事情

例えば、認知症があり、環境が変わると落ち着かなくなる方なのか。リハビリを非常に頑張る方なのか、それとも頑張ること自体を苦痛に感じる方なのか。医療としては同じ病気でも、患者さんの性格や価値観によって、必要な関わり方は変わります。

私自身、二次救急病院で診療していたとき、病気以外の情報が分からず困ることがありました。家族に連絡がつかない。本人が普段どこまで動けるのか分からない。認知症の症状が入院前からなのか、急に起きたものなのか分からない。どこまでの治療を希望しているのか分からない。こうしたことは、診療や退院支援を難しくします。そのため、クリニックとして分かっている情報は、できるだけ先に伝えたいと考えています。

そして!ひじょーーーに大切なことは!!急変しやすい病気を持った患者さん、高齢の患者さんは、日頃からこの情報を集めておくことなんですよね。忙しい外来で、今必要がない情報を集めるのは大変ですが、大切なことだと考えています。(ということで今日も疲れたんですね。伏線回収。)

鑑別診断をどこまで書くかは、今も迷います

二次病院の医師には、現在考えている鑑別診断を書くことがあります。これまでの経過や診察所見から、「肺炎が疑われる」「心不全の増悪を考える」「尿路感染症の可能性がある」といった内容です。これは、受入側の医師が診療を始めやすくなるという利点があります。一方で、先に診断名を提示することで、アンカリングバイアスが起きる可能性もあります。つまり、最初に書かれた診断に引っ張られ、別の病気を十分に検討しないまま、診断を早く終えてしまう可能性です。例えば、肺炎だと思って紹介した患者さんが、実際には心不全であったり、肺塞栓症であったりすることがあります。

紹介元の考えを詳しく書く方がよいのか。それとも、事実を中心にして、受入側に広く診断してもらう方がよいのか。これは、今でも迷うところです。

二次病院の先生方から、「こういう情報があると助かる」「鑑別診断はこの程度にしてほしい」といったご意見があれば、ぜひ教えていただきたいと思っています。クリニックからの紹介状は、完成された診断書ではありません。次の医師が安全に診療を引き継ぐためのバトンだと考えています。

例えば、肺炎が疑われる高齢患者さんの場合

例えば、普段は自宅内を杖で歩き、トイレにも自分で行けている高齢の患者さんがいるとします。発熱と咳があり、診察では肺炎が疑われました。酸素の値は少し低下しています。血圧は保たれていますが、今日は立ち上がることができず、食事も取れていません。血液検査の結果はまだ出ていません。このとき、単に「肺炎だから入院」と決めるわけではありません。まず、酸素の値や呼吸状態を確認します。次に、普段の生活と比べてどの程度悪化しているかを確認します。普段は歩けていたのに立てない。食事も取れない。家族だけではトイレ介助も難しい。この場合、検査結果を待っても、自宅に帰ることが難しい可能性が高いと考えます。

そこで、肺炎や呼吸不全に対応できる病院へ連絡します。受入先には、発熱や酸素の値だけでなく、普段は杖歩行だったこと、今日は立てないこと、家族だけでは介助できないことも伝えます。受入先が決まれば、患者さんの状態に応じて救急車か家族送迎かを決めます。家族には、なぜ入院が必要なのか、病院でどのような検査を受ける可能性があるのか、入院が確定しているのか、病院で再度判断されるのかを説明します。

これらを同時に進めて、ようやく患者さんを病院へ送り出すことができます。

ね、意外と大変ですよね?

緊急時に患者さんとご家族に準備してほしいこと

緊急入院は、完全に予定することはできません。というか、予定そのものが無理です。緊急だから。ただ、準備によって、対応をスムーズにすることはできます。

まず、お薬手帳をできるだけ最新の状態にしておいてください。江口医院で処方している薬は紹介状に記載できます。ただ、他の病院から処方されている薬や、最近変更された薬までは分からないことがあります。

次に、家族の中で、誰がキーパーソンになるかを決めておくと助かります。病状説明を聞く人、入院の意思決定を支える人、病院へ物品を届ける人が決まっていると、緊急時の連絡がスムーズになります。

入院セットを準備している方もいます。マイナンバーカード、お薬手帳、必要最小限の日用品、家族の連絡先などをまとめておく方法です。

また、普段から、起こり得る病状の変化を家族で共有しておくことも大切です。心不全が悪くなったら何が起きるのか。肺炎になったらどのような症状が出るのか。入院する場合としない場合に、どのようなメリットとデメリットがあるのか。

あらかじめ考えていると、急変時の意思決定が早くなります。これは、医療者のためだけではありません。患者さん自身が、自分の価値観に合った選択をしやすくするための準備です。

江口医院が大切にしていること

江口医院では、病名や検査結果だけではなく、その人が何を大切にしているのかをできるだけ把握したいと考えています。どこまで動けていたのか。何を楽しみにしているのか。リハビリをどのように受け止めているのか。家族がどこまで支えられるのか。どのような生活を続けたいのか。

急性期病院では、限られた時間で多くの患者さんを診なければなりません。その中で、普段の患者さんの姿を伝えることは、クリニックの大切な役割だと思っています。

私たちだけですべての医療を完結できるわけではありません。日曜日や夜間など、組織として対応が難しい時間もあります。そのときには、救急病院にお願いすることになります。だからこそ、お願いするときには、受入病院が困らないように、できるだけ必要な情報を整理しておきたい。

そして、患者さんやご家族にも、なぜ今動く必要があるのか、なぜこの病院を選ぶのかを、できる限り説明したいと思っています。

最後に

(引用:マンガ「亜人」)
正直色々と動いている間にぐるぐる混乱して、あっちが良ければこっちが駄目で、もー直接話してくれーってなることもあります。

緊急入院の場面では、患者さんもご家族も不安になります。急に仕事を休むことも、遠い病院へ行くことも、救急車を呼ぶことも、簡単なことではありません。私たちも、その負担が分からないわけではありません。ただ、病院を探している間にも時間は進みます。午後になれば検査体制が変わり、夕方になれば移動手段が減り、土曜日であれば受入先がさらに限られることがあります。ですから、緊急時には、すべての希望をかなえることよりも、まず安全に、必要な医療へつなぐことを優先する場合があります。その判断の裏側では、病気のことだけでなく、生活、家族、時間、移動、病院の機能、退院後のことまで考えています。少しでもそのことを知っていただければ、緊急時に医療者と患者さん、ご家族が同じ方向を向きやすくなるのではないかと思います。

ちなみに、この考えと動きを、外来をしながら、訪問診療を行いながら同時に行うという究極のマルチタスク。ご理解くださいませ。

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