家で治すという選択肢:入院関連障害とHospital at Homeを知る
「入院させた方が安心ですよね」って、かなり自然な感覚だと思うんですよね。在宅医療を経験してみると、この感覚に多様性が生まれるんですよ。自分も入院という環境しかしらなかったし、在宅医療での治療成績も分からなかった。
僕ら医療者でも、ふとそう思う瞬間ありますし。家族としてだったら、なおさらだと思います。
ただ一方で、こういう違和感もあって。「入院したら元気がなくなった気がする」っていう話、聞いたことないでしょうか?
じゃあこれ、どっちが正しいのか。そもそも「家で治す」って現実的な選択肢なのか。今回はそのあたり、現場ベースで少し書いてみます。
入院関連障害=入院による悪影響
実際の現場で起きていることをシンプルに言うと、
- 不安になると入院を選ぶ
- でも入院すると動かなくなる
- 結果として弱って帰ってくる
この流れ、かなり多いです。
特に高齢の方だと、75歳を超えるとかなりの割合で、80歳を超えると半分近くの方で、入院をきっかけにADLが落ちると言われています。半分近くだからかなり多いってより、入院すると弱るって考えてたほうが良いかと思います。
つまり、「安全のための入院」が、別のリスクを生んでいる構造があるんですね。
ちゃんと英語の論文もございます。分かりやすそうなのが→Kenneth E at el. Hospitalization-associated disability: JAMA. 306(16):1782-93.2011ですね。
「助かる人はどこでも助かるし、難しい人はどこでも難しい」
これはかなり率直な話になりますが。急性期病院で働いていたときの感覚として、高齢者の急性疾患については「助かる人はどこでも助かるし、難しい人はどこでも難しい」というのが、一定数あります。
医者として、役にたってないんかい!と自らツッコみたくなりますが。まあ対症療法、きつさはだいたい取れます。でも、予後については、もちろん極端な言い方なんですけど。
例えば、一度は回復したけど食事が取れず、数ヶ月で亡くなるケース。あるいは、寝たきりに近くなって帰ってくるケース。
これは珍しくないです。と言うよりギリギリで連れ込まれた患者さんの7割はこれ。1~2割が元気で何も変わらず帰れる。1~2割がそのまま亡くなる。
あともう一つ大きいのが、家族の不安です。
本来は在宅で対応できたかもしれないケースでも、「このまま家で何かあったらどうしよう」という不安で入院になる。
この感覚も間違いではないんです。見てられない!って気持ちも理解できます。
Hospital at Home
では、在宅で急性疾患をみる、いわゆるHospital at Homeはどこまで可能か。
ざっくり条件を言うと、
- 内科的な疾患であること
- 点滴、内服、注射で治療が成立すること
- 酸素管理が可能なこと
- そして何より、家族や施設側の理解があること
このあたりが揃えば、在宅でも十分対応可能です。
実際の感覚としては、治療成績は大きくは変わらない。8〜9割は同等という印象です。
ただし違いはあります。
- 病院の方が管理は強い(5〜10%程度は有利な印象)
- 在宅の方が生活は保たれる
- 在宅の方が離床時間が長く、結果的に機能が落ちにくい
ここが大きな分岐です。
下記の論文はHospital at homeで治療した成績の研究結果です。ただし、日本ならではの医療に対する価値観や文化もあります。海外の結果を無理に当てはめる必要はないですが、こんな価値観や考え方もあるんだって参考になりますよね。
David M Levine at el. Hospital-Level Care at Home for Acutely Ill Adults: A Randomized Controlled Trial. Ann Intern Med. 21;172(2):77-85.2020
あ、余談ではありますが、自宅や施設で治療したほうが医療費は安いです。個室代もかからず、個室ですしね。
たとえば~、君が(家に)いるだけで~♪
例えば、80歳の男性。軽度の肺炎。入院した場合、点滴・抗菌薬・リハビリが入りますが、1日のリハビリは20〜40分程度。それ以外の時間は、基本的にベッド上です。
一方で在宅の場合、点滴をしながら、トイレに行き、食事をし、家族と会話する。多少ふらつきながらでも、生活は続きます。
結果として、「肺炎は治ったけど歩けなくなった」というリスクは、在宅の方が低くなることがあります。
入院は絶対悪!ではなくて
ここで重要なのは、「どちらが正解か」ではなくて、
- 本人が何を望んでいるか
- 家族がどこまで支えられるか
- 施設がどこまで対応できるか
この3点を、事前にすり合わせておくことです。
特に施設の場合は、
- 体調不良時に居室対応ができるか
- デイサービス参加が必須か
- 訪問看護の介入が可能か
このあたり、事前確認しておくと判断が変わります。
当院としては、「在宅が絶対に良い」とは考えていません。可能な限り在宅で治療をしたいな~とは思っています。入院が適切なケースも当然あります。ただ、「選択肢として在宅を知らないまま入院する」これは少しもったいないと思っています。
もう一つ強調したいのは、在宅医療は「医療だけ」では成立しません。介護、観察力、家族の理解と覚悟。ここが揃って初めて機能します。逆に言うと、ここが弱いと在宅は破綻します。
あの、どの選択も100点ではないんですよね。
- 入院は安心だけど、弱るリスクがある
- 在宅は生活を守れるけど、負担や不安もある
だからこそ、「その人にとって何を守るか」ここが一番大事になります。
もし、「家で治療するってどうなんだろう」と少しでも引っかかったら、一度その前提から、一緒に整理してみてもいいかもしれませんね。
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