医療者が黙っていると思っていませんか?ペイシェントハラスメントと信頼のコスト
それ、本当に「普通のクレーム」ですか?
まー、日々診療しているとですね、いわゆる「クレーム」と呼ばれるものに触れる機会っていうのは、やっぱり少なくないです。で、多くの方は「自分はそんなことしていない」と思っているんですけど、ここが少しズレているポイントかなと思っています。
実はですね、「普通のクレーム」と思っている行為が、法律上はハラスメントに該当する可能性がある、ということはあまり知られていません。
じゃあその違いは何かというと、個人的には結構シンプルで、「感情のコントロールができているかどうか」この一点に集約されることが多いです。
医療現場で起きている「具体的な行動」
例えばですね、伝えたい内容以上に大声になってしまうとか、あるいは、対応が難しいと説明されても帰らないとか、長時間居続けるとか。こういった行動は、内容の正しさとは別に、ハラスメントと判断される可能性が高くなります。
あと最近感じるのは、「医療」ではなくて「サービス」を求めているケースですね。例えば、「この薬を出してほしい」と強く要求されることがあります。ただ、保険診療というのは、医師の診断のもとに必要な医療を提供する仕組みなので、患者さんが内容を決めるものではないんですね。
ここが、一般的なサービス業とは大きく違うところです。
実際に何が起きているか
これ、あまり表に出ない話なんですけど、医療事務や看護師の離職理由の中に、ハラスメントが含まれていることはまあまああります。1回だけであれば耐えられる人もいます。ただ、それが何回も続くと、やっぱり難しくなってくるんですね。
で、もう一つ重要なのが、スタッフが萎縮するとどうなるかです。例えば、過剰に防御的になります。説明が必要以上にリスク寄りになったり、検査が増えたり、紹介が増えたり。
結果として、患者さん自身の医療の質が下がる可能性があります。
そもそも人間には表面に出にくい悪意って奴があると思うんですよ。飲食店でも、店員をこき下ろして、出てきた食事に保証できますか?にこにこしながら、悪意のある行動が取れる人もいます。一時的な感情の高ぶりでそんなリスクは自分は取れないなぁと思っています。
クレームとハラスメントの違い
もう一度整理すると、クレームとハラスメントの違いは「内容」ではなく「伝え方」です。体調が悪いと、感情のコントロールが難しいことは理解できます。ただ、それがそのまま許されるかというと、それは別の問題です。
極端な話になりますけど、強い感情が生まれることと、それをどう表現するかは分けて考える必要があります。
なぜ医療はトラブルが起きやすいのか
これは構造的な問題も大きいです。医療って、まず不確実性が高いですし、情報量も患者さんと医療者で差があります。さらに、日本の医療は診療報酬で価格が決まっているので、時間をかけた説明をしたくても、それに対する対価を自由に設定できません。
あと、個別性が高い。同じ病気でも、対応が人によって変わる。
こういった条件が重なって、どうしてもトラブルが起きやすい仕事なんですね。
例えばこんなケース
例えばですね、「この薬をどうしても出してほしい」と強く言われたケースがありました。制度上は難しいので説明をするんですが、納得されない。で、感情的になってしまって、長時間その場を離れない。
こういった場合、最初はクレームだったものが、途中からハラスメントに変わっていく可能性があります。この境界線は、実は連続的なんですよね。
では、どう伝えればいいのか
ここで誤解してほしくないのは、「何も言うな」という話ではないです。むしろ、困っていることは伝えていただいた方がいいです。
ただ、その時に
- 感情を少し切り分ける
- 要求ではなく相談の形にする
あと、待ち時間などはシステムの問題であることも多いので、個人に向けた怒りに変換しない、という視点も大事かなと思います。
私たちが大切にしていること
医療って、結局「人」が提供するものです。機械がやっているわけではないので、人を大事にしないと、いい医療は提供できません。なので、私たちはスタッフを守ることを大事にしています。これは結果的に、患者さんの利益につながると考えています。
一方で、信頼関係がどうしても築けない場合には、お互いのために距離を取る、という判断もあり得ます。悪質なケースについては記録として残りますし、積み重なれば診療の制限につながることもあります。
信頼にはコストがある
少しだけ考え方の話をすると、人は「失うこと」を強く評価する性質があります。なので、一度失った信頼を取り戻すには、少なく見積もっても2倍くらいのコストがかかると考えた方がいいです。
これは患者さん側にも、医療者側にも同じことが言えます。
お互いにとって「いい医療」のために
あの、我慢してほしいという話ではないんですね。正当な指摘は、むしろありがたいです。それが医療の改善につながることも多いので。ただ、その伝え方によっては、結果的に自分にとって不利になることもある、というのは知っておいてほしいです。
医療者と患者さんは、上下関係ではなくて、対等な関係です。その前提の中で、お互いにとって納得できる医療ができるといいなと思っています。
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