「いつもと違う」を医療につなぐ ― 多職種連携における“モニタリング医療”の実際 ―


先日、成章ネットワークの多職種交流会@佐賀市役所大財別館にて、高齢者モニタリングをテーマにお話しする機会をいただきました。

そこで強調したのは、ひとつの考え方です。

診察だけが医療ではない。
デイサービスも、訪問看護も、施設ケアも、すべてが“モニタリング”である。

これは概念論ではなく、日々の臨床の中で確信している実践的な事実です。


高齢者医療の本質は「治療」より前にある

高齢者は、教科書通りに症状を訴えません。

  • 発熱しない肺炎

  • 痛みを訴えない骨折

  • 進行してから見つかる脱水や感染

  • 食欲低下だけで始まる全身状態の悪化

これらは特別なケースではなく、日常です。

つまり医療の本当の入口は
「診察室」ではなく「生活の場」 にあります。

しかし、生活の場で起きている変化は
「医療言語」ではなく
「なーんか違うねぇ」「どうしたとね?」という生活言語で表現されます。

ここに断絶が起きると、発見は遅れます。


なぜ連携しないと遅れるのか

施設や在宅の現場では、こうした声が少なくありません。

「これくらいで医師に相談していいのか分からない」
「怒られるのではないかと思ってしまう」

この心理的ハードルは、現場の能力不足ではなく、構造の問題です。

医師側は「医学的に整理された情報」を受け取る前提で待ち、
現場側は「医学的でない気づき」を抱えたまま躊躇する。

このズレがある限り、医療は“重症になってから呼ばれる仕組み”になってしまいます。

だからこそ必要なのが、医療へ至る前段階の“モニタリング共有” です。


小さな違和感が医療に変わった実例

ある入所者の方。
バイタルは大きく崩れていませんでした。

しかし職員さんの言葉はこうでした。

「いつもより反応が遅い気がする」
「食事のペースが違う」(食いしん坊の食欲不振は大きな病気が隠れていることが多い)

この情報がMCS(Medical crae station)で共有され、看護師がヒアリングし、医療言語へ翻訳。軽度の意識変容と判断し評価すると、感染症の初期でした。

発熱もなく、呼吸苦もないが、血液検査をすると感染症のデータでした。

もし「様子を見ましょう」になっていたら、数日後には全身状態悪化の可能性が高かった。

これは高度な医療ではないけども、「いつもと違う」を拾えた連携の結果ですよね。


ICTは“効率化ツール”ではなく“心理的安全装置”

MCSなどのチャット連携を積極的に使っているのは、効率化だけが目的ではありません。

重要なのは、

  • お互いに時間が合わなくても(非同期コミュニケーション)相談できる

  • 文章で整理しながら伝えられる

  • 記録として残る

  • 「怒られない形」で相談できる

という心理的安全性です。

重大で即時判断が必要なものは電話、待てるものはチャット。

この使い分けができると、医療側も現場側も無理がありません。

結果として「ちょっとした違和感が消えずに医療に届く」仕組みができます。

*MCSから何も収益は得ておりません!ちなみにちょっと使うくらいは無料です。


診察も、処方も、すべてはモニタリングの一部

外来診療も訪問診療は「薬を出す場」ではありません。

診察も 処方調整も 経過説明も

すべてが「状態変化を追い続けるプロセス」です。

薬を減らす判断もモニタリング
増やす判断もモニタリング
見送る判断もモニタリング

そして、疾患の自然経過を踏まえ、

  • どこまで回復が見込めるのか

  • どの段階から変化が加速するのか

  • ご家族が心の準備をする時間はあるか

これを事前に伴走しながら共有することが、見取りや急変予測への関与につながります。

「思ったより早かった」って言われるのが嫌なんです。勿論仕方がない病態もありますよ。だけど、「思ったより早かった」って本人にも家族にも思ってほしくない。可能な限り減らしたい。

残された時間を把握しながら、今を大事に生きてほしい。これも医療の役割だと考えています。

ちなみに、自分はあと8998日で死ぬ予定。(Life Clockというアプリを使っています)


デイサービスは“生活データの宝庫”

診察は月1回の点の情報(まぁそれを積み重ねるのですが)。デイは月の中でも多く線の情報。医療が後者と結びつかないのは、めちゃくちゃ損してますよね。

  • 表情の変化

  • 活動量の微妙な低下

  • 会話の反応速度

  • 食事への関心

これらは検査では拾えません。

しかし、ここにこそ悪化の初期信号があります。

だから、デイも医療のモニタリング装置の一部と捉える連携が重要になります。


相談のハードルは低いほど良い

判断材料が揃っていなくても構いません。

「何か違う気がする」この段階で共有していただける方が助かります。

医療側は、そこから整理し、必要なら評価します。

判断を一人で抱えなくていい状態を作ること。それが連携の意味だと思っています。

*できたらMCSなどのチャットツールがありがたや!


最後に

高齢者医療は、高度な治療技術よりも早い気づきを支える構造 が結果を左右します。

診察室だけでは完結しない医療を、生活の現場と一緒に作っていく。

そのための訪問診療体制と、多職種連携の仕組みを整えていきたいですね。

小さな変化の共有、大歓迎です。それが、大きな悪化を防ぐ一歩になります。

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