「予約したのに待たされる?」──日本の医療アクセスと時間予約・順番予約の真実
はじめに:「日本の医療って、待たされるよね?」という誤解
「病院って、結局どこも待たされるよね。」
そんな声を耳にするたびに、私たちは少し寂しい気持ちになります。特にお忙しいビジネスパーソンにとって、「時間を決めて予約したのに、結局待つのなら意味がない」と感じることもあるかもしれません。
でも、少し解説させてください。
“待ち時間があること”と“医療アクセスが悪いこと”は、必ずしも同じではありません。
実は、日本の医療は世界でもトップクラスのアクセスを誇ります。
実は「世界随一のアクセス大国」、それが日本
医療アクセスとは、患者が「必要なときに」「必要な医療に」「過度な負担なく」たどり着けるかを示す概念です。これは単なる利便性の話ではありません。医療アクセスの良し悪しは、時に命を分ける要因となります。
この点において、日本の医療は世界的に見ても特異です。特に注目すべきは、2009年に世界的に流行した新型インフルエンザ(A/H1N1pdm09)パンデミックにおける日本の対応です。
たとえば日本では、患者2,070万人に対して死亡者は198人、人口10万人あたりの死亡率は0.16人でした。これは、英国(0.76人)、オーストラリア(0.93人)、米国(3.96人)と比較して圧倒的に低く、米国の約25分の1です。早期診断・治療体制の整備と、それを可能にした医療アクセスの良さが、こうした結果を支えました。
特に注目すべきは、リスクの高い妊婦の死亡例が日本ではゼロだったことです。
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日本:妊婦の死亡例0人、ICU入院2人
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オーストラリア・ニュージーランド:妊婦7人死亡、ICU入院64人
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米国:妊婦56人死亡、ICU入院280人
日本の妊婦のうち感染リスクがあった数万人に対して、迅速な診断と治療が行われたことが奏功しました。これは、アクセスが良く、すぐに医師の判断と治療を得られる医療体制があったからこその成果です。
パンデミックでは、感染初期に迅速に対応できるかどうかが生死を分けます。欧米諸国では、発症してから医療にアクセスするまで4日以上かかることが多く、迅速診断キットの精度も落ちて治療も遅れがちでした(そしてその頃に薬剤を使用しても効果が薄い)。一方、日本では発症から48時間以内に受診する患者が多く、迅速診断が有効に機能し、適切なタイミングで薬が処方されました。
ここまでの数値から明らかなのは、医療アクセスは“便利”かどうかの話ではなく、命に直結する社会インフラだということです。日本は世界でも稀に見る「その日のうちに医療にアクセスできる国」です。
このような医療アクセスを維持するには、患者側の理解と協力も不可欠です。例えば「待ち時間がある=悪い病院」と短絡的に判断せず、全体として命が守られる仕組みを知っていただくことが大切です。待ち時間が多少あっても、その先にあるのは「命を守る医療」です。
「時間予約」と「順番予約」のちがい、知っていますか?
医療機関の予約方法には大きく分けて「時間予約」と「順番予約」の2つがあります。一見どちらも「予約」と言えますが、その仕組みや患者さんの体験には大きな違いがあります。
「時間予約」とは、あらかじめ診察を受ける時刻を指定して予約する方式です。たとえば「10時30分に診察」というように、時間が明確に決まっているため、予定を立てやすく、来院後の滞在時間も短く済むことが多いのが特徴です。ビジネスパーソンや子育て中の方など、「限られた時間で動きたい」という方にとっては大きなメリットです。ただし、診察が長引いたり、急患対応が入った場合は、時間どおりに呼ばれないこともあり、「予約したのに待たされた」という印象を持たれることもあります。また、時間調整に失敗すると連鎖的に押すというデメリットもあります。
一方、「順番予約」は、診察の順番だけを予約する方式です。たとえば「○番目に診察」という形で予約できるため、当日の朝や直前でも取りやすいという利点がありますが、実際に呼ばれる時間は流動的で、長く待つ可能性が高くなります。「呼ばれるのが何時になるのか分からない」という不安や、長時間の院内滞在がストレスになる方もいらっしゃいます。
つまり、時間予約は「時間の見通しが立つ安心感」、順番予約は「柔軟性の高さ」に強みがあります。ただし、効率的で快適な受診体験を求めるなら、ある程度待ち時間が読める時間予約のほうが、結果的にメリットが大きいと思います。
ちなみに予約をしない、ラーメン屋さん方式もあります。患者さんは並んでいる数で待ち時間を推測します。実は医療者側は比較的楽です。窓口の電話での予約の対応がなくなり、診察でも次の予約はいついつということもなくなります。医療提供者のデメリットは予習が出来ないことです。一定の医師は翌日予約が入っている患者さんの予習をしています。検査は適宜されているか、その他健康づくりに必要な事項はないかと考えています。また、事務員は必要な書類を準備していますし、看護師は検査の順番などをシミュレーションしています。
「時間予約したのに待たされる理由」は、実は医療制度にある
では、なぜ「時間予約」でも待たされることがあるのでしょうか?その理由は、大きく分けて3つあります。
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前の患者さんの診察が長引く
予想以上に複雑な病状や、説明が必要な場合もあります。また、メンタルケアが必要な患者さんは診察が長くなりやすいです。(精神科は全く対応しない内科診療所がある理由の一つです) -
急な対応(例えば肺炎、低酸素血症やアナフィラキシー)
命に関わる事態には、すべての予約が後回しになることもあります。急な検査や紹介状の作成などで時間がかかります。 -
制度の設計上、診察時間が短く設定されている
日本の診療報酬制度では、「時間に応じた報酬」よりも「回数」が重視されています。
つまり、“時間どおりに呼ばれない=怠慢”ではなく、制度的・医療的に避けがたい要素があるのです。
「アクセスが良い国」であるがゆえの代償
待たされたと言えども、世界的に見て、医師に気軽に診てもらえて、すぐに薬がもらえる国は珍しい存在です。その代わり、日本の医療には次のような「代償」もあります。
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ひとりひとりの診察時間が短くなりやすい
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医師も患者も「速さ」を求められるため、説明が十分でないと感じることがある
当院ではこのギャップを少しでも埋めるため、説明資料や事前問診、LINEでのやり取りを通じて、短時間でも納得できる医療(可能な限り)を目指しています。
公式LINEによる予約のおすすめ:忙しいあなたへ
ビジネスパーソンの皆さん、こう思ったことはありませんか?
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電話は診療時間内しかかけられないし、なかなか繋がらない
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窓口に行くのが面倒
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予約したはずなのに忘れてしまう
そんな方におすすめなのが、当院の公式LINE予約です。
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時間外でも入力できる
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文面が残るので「予約した日時」が見返せる
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電話がつながらない時にも使える
通勤中や昼休みにスマホでさっと予約、これができるのが「時間予約制 × LINE予約」の強みです。ただし、時間外に対応していません(休まないと続かないんです…)。
最後に:日本の医療、もっと誇っていいと思いますよ(自画自賛すみません)
「日本の医療は待たされる」と嘆く前に、ちょっとだけ視点を変えてみませんか?
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その日に診てもらえる
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数千円で診療+薬が手に入る
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頻繁に通えて、早く対応してもらえる
こんな医療は、実は世界でもごく少数です。
そして、そんな医療をより快適に受ける方法の一つが、「時間予約制の活用」です。
自分が通いたくなるようなクリニックでありたい、そのために大切な“時間”と“健康”を両立する医療をバランスを取りながらですが、目指していきたいと思っています。
参考文献
菅谷憲夫「COVID-19パンデミック後のわが国の感染症の動向 インフルエンザ」日本医師会雑誌 第154巻第1号(2025年4月23日発行)pp.23–27
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