長時間労働は精神疾患の原因なのか?産業医研修で考えた過重労働対策の限界

今日は、地区の住民運動会でした~!ほんのり暑い中皆盛り上がっていましたね。自分は途中で往診に呼ばれて抜けてしまいましたが、その後ちゃっかり打ち上げには参加してきました🍺

その仕事、本当にそこまでしてやりたいですか?

先日、産業医の研修を受けてきました。今回は実地研修もあり、グループワークもあり面白かったですね。M先生の話はいつも面白くて引き込まれます。

さて、産業医というのは、企業で働く人の健康を守るために、医学的な立場から助言する医師のことです。いま2つの企業の産業医として働いています。今回は、過重労働と健康への影響について学びました。

研修を受けて、改めて考えさせられたことがあります。長時間労働を減らすことは大切です。でも、それだけで働く人の健康を守れるのでしょうか。

そして、もう一つ。

働きすぎている人に対して、私たちは単に「仕事を減らしましょう」と言えばよいのでしょうか。

残業を減らすことと、健康を守ること

長時間労働が健康に悪影響を及ぼすことは、よく知られています。特に気をつけたいのが、睡眠時間です。残業が増えると、帰宅が遅くなる。翌朝の出勤時間は変わらない。すると、真っ先に削られやすいのが睡眠時間です。睡眠不足が続けば、心身の不調につながります。長時間労働は、腎機能など身体の健康にも悪影響を及ぼす可能性があります。

私自身、過重労働を防ぐうえで、まず守るべきなのは睡眠時間だと考えています。ただ、今回の研修で特に興味深かったのは、労働時間と精神疾患の関係について、一律に説明することの難しさでした。

労働時間と精神的な負担の関係は、単純ではありません。仕事への満足度や職場の人間関係、本人の置かれた状況など、さまざまな要因が関係します。

もちろん、だからといって長時間労働が精神疾患に関係しないという話ではありません。問題は、労働時間を減らすことだけで、精神疾患の予防を十分に説明できるのかということです。

ちなみに私の長時間労働は、通勤時間ゼロ、食事をプロテインなどで時短、趣味は息抜きはの良いゲームという形で成り立っています。もちろん、家族のサポートがあってのものですが。

過重労働が減っても、精神疾患は減っていない

研修で示された数字も印象に残りました。

過重労働に関する指標は、10年間で14%から8%に低下している一方、精神障害の労災支給決定件数は、同じ期間に約2倍に増えているという話でした。

ここは、少し立ち止まって考えたいところです。

過重労働が減っているのに、精神障害の労災支給決定件数が増えている。では、過重労働対策は効果がなかったのでしょうか。

そう簡単には言えません。

そもそも、この2つの数字は同じものを測っているわけではありません。労災の認定基準や申請状況、社会的な認知なども、支給決定件数に影響し得ます。対象期間や指標の定義をそろえなければ、単純な比較から政策の効果を判断することはできません。実際、講師の先生に聞いてみると、精神疾患の認定ルールが変わったことも1つの理由だとのことです。

それでも、考えるべき問いは残ります。

私たちは、測定しやすい問題を改善することに集中しすぎていないでしょうか。労働時間は数字で測れます。残業時間を減らすという目標も立てやすい。一方で、人間関係の悩み、仕事への責任感、失敗への恐怖、本人が抱える葛藤は、簡単には数字にできません。

長時間労働への対策は必要です。しかし、時間を規制するだけで問題を解決しようとすれば、見落としてしまうものがあるのではないかと思います。

仕事を減らすことで、健康を取り戻した人たち

これまで産業医というより臨床医として働く人の健康に関わるなかで、残業や出張を制限したことによって、健康状態が大きく改善した人もいました。

例えば、HbA1cが13%から6%まで改善した人もいます。もちろん、改善の理由を労働時間の制限だけに帰することはできませんが、仕事のあり方を見直すことが健康に影響するのは確かです。身体の不調については、仕事の負担を減らすことで改善につながるケースを経験してきました。腰痛についても、以前と比べて状況が変わってきたように感じます。

一方で、精神的な不調については、また違った難しさがあるように思います。

以前と比べて、仕事を休むことへの抵抗感は小さくなっているように感じます。有給休暇を取得することも、以前ほど特別なことではなくなってきました。

それでも、精神的な不調を抱える人はいます。

仕事の量が多すぎるのか。人間関係に問題があるのか。責任を感じすぎているのか。それとも、仕事以外の生活も含めて、何か別の問題があるのか。もちろん、これらは互いに独立したものではありません。だからこそ、単純に労働時間を減らすだけでは、解決しない問題があるのだと思います。

講師の先生もなかなか特効薬はないとのことでした。仮説レベルではマネージャーの力量が影響しているかも!?とのことでした。

「本当にそれを求めているのですか?」

働きすぎている人に対して、私なら一度、こんなことを聞いてみたいと思います。「本当に、それをそこまでしてやりたいのですか?」少し意地悪な質問に聞こえるかもしれません。しかし、本人が何を求めているのかを確認することは、大切だと思っています。

仕事で成果を出したい。大きな事業を成し遂げたい。自分の能力を高めたい。家族の生活を守りたい。誰かの役に立ちたい。働く理由は、人それぞれです。その仕事に大きな意味を感じていて、本人が納得して取り組んでいるのなら、単純に労働時間が長いという理由だけで、その働き方を否定する必要はないのかもしれません。

ただし、ここには注意が必要です。本人が「やりたい」と言っているからといって、それが本当に本人の望みとは限りません。周囲の期待に応えたい、失敗するのが怖い、仕事を断れない、休むと迷惑をかける。そうした思いから、働き続けていることもあります。

だからこそ、一度立ち止まって考える必要があります。(そろそろAIセルフコーチングの本を読み終わりますのでご紹介しますね)自分が本当に望んでいることなのか。それとも、そうしなければならないと思い込んでいるだけなのか。自分の考え方を振り返る時間は、働きすぎている人にこそ必要なのかもしれません。周囲の人も、本人のイライラや落ち込み、疲労に気づいたときには、ただ仕事を減らすように説得するだけではなく、何が負担になっているのか、何を大切にしたいのかを一緒に考えることができるとよいと思います。もちろん、睡眠不足や心身の不調が続いている場合には、本人の希望だけに任せず、休養や医療的な支援を優先すべきこともあります。

企業にも、働き方を変えるための余力が必要

ここまで書いてきましたが、働く人に「自分の望みを考えましょう」と伝えるだけでは、解決できない問題もあります。企業には、事業を継続しなければならないという事情があります。仕事を減らしたくても、人手が足りない。残業を減らしたくても、売上が減ってしまう。従業員の健康を守りたくても、事業を維持できなければ雇用そのものが失われてしまう。そうした状況もあるでしょう。

では、どうすればよいのでしょうか~。私は、企業が過重労働を防ぐためには、労働時間の管理だけでなく、事業の収益性についても考える必要があると思います。同じ人数で、より付加価値の高い仕事に集中する。業務の無駄を減らす。提供するサービスに見合った価格を設定する。

場合によっては、値上げも必要でしょう。ユーザーとしては辛いのですが。価格を上げられず、利益も確保できず、従業員の労働時間も減らせない。それでは、いずれサービスを提供し続けることが難しくなります。必要な価格転嫁ができないのであれば、提供するサービスを見直したり、場合によっては撤退したりする判断も必要になるでしょう。

これは、医療や介護のように、社会にとって必要なサービスでも同じ問題を抱えています。もちろん、社会的に不可欠なサービスを単純に撤退すればよいという話ではありません。公的な支援や制度設計も必要です。それでも、働く人の善意や自己犠牲によってしか成立しない事業を、いつまでも維持することはできません。

従業員の健康を守ることと、企業が利益を確保すること。この2つを対立するものとして扱うのではなく、両立させる方法を考える必要があると思います。

私自身も、働きすぎている

ここまで、いろいろと書いてきました。が!!!ただ、私自身のことを振り返ると、過重労働と言える状態にあると思います~。偉そうに言っておきながら!!人に対しては睡眠を大切にしましょう、働きすぎないようにしましょうと言いながら、自分自身が十分にできているわけではありません…。

これは、なかなか難しい問題です。仕事には、やりたいことも、やらなければならないこともあります。大きな仕事をしようとは思わないのですが、丁寧な仕事をしようと思えば、ある程度の時間は必要なんです。

一方で、使える時間には限りがあります。睡眠を削って時間を捻出すれば、短期的には仕事が進むかもしれません。しかし、それを長く続けられるとは限りません。大きな仕事をしたいのであれば、長時間働くことだけを考えるのではなく、健康を維持しながら長期間働けるようにすることが大切なのだと思います。

私自身、最近は休みの日に何をすればよいのか、よく分からなくなってきました。仕事をしていると、やることはいくらでもあります。ところが、仕事から離れると、何をすればよいのか迷ってしまう。仕事中毒ですね。とりあえず、近場を旅行してみようかと考えています。ミニバレーもしたいな。休むことも、練習が必要なのかもしれません(笑)

産業医は、働く人と経営者の両方を支える

産業医の役割についても、改めて考えました。産業医がいることで、従業員は職場の上司とは異なる、第三者の立場から健康について相談する機会を得られます。経営者にとっても、従業員の健康上の問題を早期に把握し、対策を検討する機会になります。

大切なのは、問題が深刻になってから対応するだけではなく、早い段階から相談できる関係をつくることだと思います。病気も治療より予防が簡単です。体調を崩して働けなくなってからでは、本人にとっても企業にとっても負担が大きくなります。

従業員が安心して働き続けられることと、企業が持続的に事業を続けられること。その両方につながる対策を提案するのが、産業医の役割の一つだと考えています。そのためには、企業と産業医の間で必要な情報を共有し、連携することも重要です。健康上の問題が小さいうちから相談できれば、対応の選択肢も広がります。

産業医の仕事は、単に残業時間を確認して、基準を超えていないかをチェックすることだけではありません。働く人の健康と企業の経営を、どうすれば両立できるのか。その方法を一緒に考えることにも意味があると思います。

Chief Health Officer、責任者とまでは言えないかもしれませんが、責任をもって健康のアドバイスをしていきたいものです。

健康を守るために、何を減らし、何を残すのか

今回の研修を通じて、改めて考えたことがあります。過重労働を防ぐことは大切です。特に、睡眠時間を削るような働き方は、できるだけ避けるべきです。ただ、働く時間を減らすこと自体が、最終的な目的ではありません。仕事を通じて何を実現したいのか。何を大切にしたいのか。健康を損なってまで続ける必要があるのか。そうした問いを考えることも、健康を守るためには必要なのだと思います。

そして、本人が望む働き方を実現するためには、企業側にもそれを支えられる経営上の余力が必要です。個人の努力だけでも、労働時間の規制だけでも、解決できない問題があります。

私自身も、仕事を減らすべきなのか、何を残すべきなのか、まだ答えが出ているわけではありません。ただ、これから先も大きな仕事をしたいのであれば、健康を犠牲にして働くのではなく、健康を保ちながら長く働ける方法を考えていきたいと思います。通常、労働者個人の最大能力と最大年収は晩年に訪れます。そこの5年働けなかったら一番もったいないですよ。

また、その仕事は、本当に自分が望んでいることなのか。働きすぎていると感じたときには、一度立ち止まって、そんな問いを自分に向けてみてもよいのかもしれませんね。

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