集団的個別指導とは? 医療費が高いクリニックは不正をしているのか
集団的個別指導に行ってまいりました~!診療で疲れている後、皆で集まりましたよ。参加された皆さんお疲れ様でした。皆さんのご期待に添えず?集団的個別指導時の句がひねり出せず。
今日の一句「朝焼けの 見える稜線鮮やかに 遠い家族と お看送りする」(高木瀬の施設)
医療費が高い。それだけで問題なのだろうか
さ、九州厚生局が主催する「集団的個別指導」のお話です。2回目なので当日は、思っていたよりも穏やかな雰囲気でした。初めて呼ばれた知り合いの先生は心持ち緊張されているようでした。自分は少しほっとした気持ちになりましたが(笑)
ところで、「医療機関が厚生局の指導を受けた」と聞くと、皆さんはどのような印象を持つでしょうか。何か悪いことをしたのだろうか。不正請求でもあったのだろうか。そう思う方もいるかもしれません。というより、そう思う人の方が多いかもしれません。
しかし、指導を受けることと、不正をしていることは同じではありません。今回は、集団的個別指導を受けた経験から、医療費と医療の適正化について考えてみたいと思います。
集団的個別指導とは何か
まず、制度について簡単に説明します。
保険診療を行う医療機関は、健康保険法などのルールに従って診療報酬を請求します。厚生局は、保険診療の質を高め、診療報酬請求の適正化を図るために、医療機関への指導などを行っています。
ちゃんとルール通りにしてくださいね~って奴です。当日解説H先生が免許の講習の話をされていましたが、似ている制度ですね。
今回受けた集団的個別指導は、個別指導とは別のものです。
集団的個別指導では、診療科や医療機関の機能などを考慮したうえで、レセプト1件当たりの平均点数が高い医療機関などが選定対象になります。単純に医療費の総額が高いという話ではありません。
ここは、一般の方には少し分かりにくいところかもしれません。「医療費が高い医療機関が指導を受ける」と聞けば、その医療機関に問題があるから呼ばれたのだと思うかもしれません。しかし、選定されたこと自体が、不正を行ったという意味ではありません。
医療費が高いのは、医療機関が儲かっているからなのか
私が地域の皆さんに知っておいていただきたいのは、ここです。医療費が高いからといって、その金額がそのまま医療機関の利益になるわけではありません。
例えば、重症の患者さんを診療する場合を考えてみます。患者さんの状態によっては、薬剤費の高い薬を使用することもあります。検査が必要になることもありますし、点滴や看護師による処置などが必要になることもあります。病状によっては、診察や処置の頻度が多くなることもあります。こうした医療が必要であれば、当然、診療にかかる費用は増えます。一方、医療機関には、薬剤や医療材料などの費用がかかります。診療報酬として請求する金額が大きくても、そこから必要な費用を差し引かなければなりません。
なんと!場合によっては、費用が診療報酬を上回り、いわゆる逆ざやになることもあります。ナフサショック、円安などで海外から供給されている物品は逆ざやになったこともありました。つまり、医療費の高さと、医療機関の利益の大きさは、必ずしも一致しないのです。
もちろん、必要のない医療を行って診療報酬を請求することは問題です。適正な診療と請求が行われているかを確認する仕組みは必要です。ただ、医療費が高いという数字だけを見て、医療機関の姿勢や診療の適否まで判断することはできません。
大切なのは、その医療費が何によって生じているのかを考えることだと思います。
指導制度が、患者さんの不利益につながる可能性
もう一つ、考えておきたい問題があります。それは、レセプトの点数が高い医療機関を選定して指導する仕組みが、結果として患者さんに不利益をもたらす可能性です。
例えば、睡眠時無呼吸症候群でCPAPなどの機器を使用している患者さん。インスリン注射を行いながら、間欠スキャン式持続血糖測定器などを使って血糖管理をしている患者さん。抗がん剤による治療が必要な患者さん。病状に応じてCT検査を繰り返し行う必要がある患者さん。
こうした患者さんを診療すれば、薬剤費や検査料、医療機器に関連する費用などによって、レセプトの点数が高くなることがあります。もちろん、必要のない医療を行ってよいわけではありません。必要性を医学的に判断し、適切に診療報酬を請求することが大前提です。
ただ、ここで医療機関側の立場を考えてみます。
レセプトの点数が高ければ、指導の対象に選定される可能性が高くなる。そのことを医療機関が意識するようになれば、どうなるでしょうか。
明示的に「こうした患者さんは受け入れません」と宣言する医療機関は、そう多くないかもしれません。しかし、経営上の負担や指導への懸念から、結果として高額な医療を必要とする患者さんの受け入れに消極的になる。あるいは、そうした患者さんが集まりにくい診療体制を選ぶ。
そのような行動が生じる可能性は、考えておく必要があると思います。
これは、医療機関が悪意を持って患者さんを拒否するという話ではありません。制度によって生じる負担を避けようとする行動が、意図せず患者さんの受診機会を狭めてしまうという問題です。もし、必要な医療を提供するほど指導の対象になりやすいと医療機関が感じるならば、制度の目的とは逆の方向に働いてしまう可能性があります。
本来、指導制度が目指すべきなのは、不必要な医療や不適切な請求を是正することです。必要な医療を提供している医療機関が、そのことを理由に高額な医療を必要とする患者さんの受け入れをためらうような状況は、避けなければなりません。
医療費を適正化することと、必要な医療を受けられる機会を守ること。この二つを同時に実現できる制度であることが重要です。
指導の対象を選定する際にも、単にレセプトの点数を見るだけでなく、患者さんの病状や診療内容をどこまで考慮できるか。その点は、今後も検討されるべき課題でしょうね。
ちなみにこの制度は訪問看護ステーションも始まることとなりました。
なぜ指導の仕組みが必要なのか
集団的個別指導のような制度は必要なのでしょうか。私は、必要だと思います。日本の公的医療保険は、患者さんが医療費の一部を負担し、残りの多くを保険料や公費などで支える仕組みです。保険料を支払っている方々にとって、自分たちのお金が適切に使われていることは重要です。もし不必要な診療や不適切な請求があれば、是正されなければなりません。
その意味で、医療機関の診療や請求を確認する仕組みには意義があります。
ただし、もう一つ考えたいことがあります。
制度の目的が正しいことと、対象を選ぶ方法が最適であることは、別の問題です。
今回のように、レセプト1件当たりの平均点数などをもとに医療機関を選定する仕組みには、一定の合理性があります。数字を使えば、多くの医療機関を一定の基準で比較できるからです。しかし、数字だけでは、患者さんの病状や診療の背景をすべて把握することはできません。重症の患者さんが多い医療機関と、そうではない医療機関では、診療に必要な費用が異なる可能性があります。その違いを、どこまで選定の仕組みに反映できるか。ここには、改善の余地があるのではないかと感じました。
AIの時代には、指導のあり方も変わるかもしれない
今回の経験から、もう一つ考えたことがあります。今後、AIやデータ分析の技術が進歩すれば、医療機関の診療報酬データを、現在よりも詳細に分析できるようになるかもしれません。例えば、診療科や患者さんの背景などを考慮しながら、通常とは異なる傾向を示す医療機関を抽出する。そうした分析を、指導が必要な医療機関を選ぶ際に活用することも考えられます。
もちろん、データ上の違和感が、そのまま不正を意味するわけではありません。数字から分かることと、実際の診療内容を確認しなければ分からないことがあります。AIが異常を検出したとしても、その背景を確認し、適切に判断する過程は必要です。それでも、単純な平均値だけで比較するよりも、診療の背景を考慮した選定ができるようになれば、制度はさらに改善されるかもしれませんね。
医療機関を適正に指導するという目的を維持しながら、より合理的な方法を探していく。技術の進歩には、そうした可能性もあると思います。
医療費の適正化と、必要な医療を届けること
今回、集団的個別指導を受けたこと自体は、特別な出来事というわけではありません。2度目ですし。ただ、こうした経験を通じて、医療費について改めて考える機会になりました。このご時世、保険料を支払っている地域の皆さんのために、医療費が適正に使われる仕組みは必要です。一方で、医療費が高いという数字だけを見て、その医療機関が不適切な診療をしていると判断することもできません。必要な医療には費用がかかります。そして、その費用が何に使われ、どのような診療につながっているのかを確認することが大切ですね。
さらに、医療費の適正化を進める過程で、必要な医療を提供する医療機関が患者さんの受け入れをためらうようなことがあれば、それもまた避けるべき問題です。制度を守ることと、患者さんに必要な医療を届けること。その両方を実現するには、数字を確認するだけでなく、その背景にある医療の実態を理解する必要があるのだと思います。
医療費を適正に使うことは、患者さんのためであり、保険料を支払う地域の皆さんのためでもありますものね。そして、必要な医療を安心して受けられる仕組みを守ることも、同じように大切なことだと考えています。

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