ぶすりでパタリ ──VVR(血管迷走神経反射)と上手な付き合い方

当院では看護師業務改善委員会という名のもとに看護師業務の改善に務めております。患者さんのためだったり、効率化のためだったり。今日は、採血のときに起こる 「VVR(血管迷走神経反射)」 が話題になりましたのでせっかくなのでブログにしてみます。

採血って、ルーティンの医療行為です。ただ、診療所でも年に数回は失神が起きる
「そんなに?」と思うかもしれませんが、これはどの医療機関でも起こります。

そして、よく誤解されます。「採血が下手だったから倒れたんじゃないか?」
──違います。

倒れる理由は 身体の自律神経反応 です。

周りの患者さんも相当焦りますよね。そして、次の採血待ちの患者さんは極度に緊張しています(そりゃそーだ)。


■ VVRとは?

血管迷走神経反射(Vasovagal Reflex)

ざっくり言うと、血圧と脈拍が急にストンと下がる現象

脳への血流が減る → 一瞬意識が遠のく
ほとんどの場合、数秒で回復し、後遺症は残りません。

科学的には、「痛み・緊張・恐怖・不安」などの心理的ストレスによって迷走神経が刺激され、心拍数が低下することが原因です。


■ 年齢と性別でリスクが変わる

まずそんなに起きません。怖がりすぎないで(笑)

  • 採血室での失神(VVS)発生率: 0.004%→ 10万人の採血中、約4人。(大規模研究)

  • 献血環境でのVVR発生率: 0.1〜0.5%

ここ、現場の視点で特に伝えたいポイントです。

30代以下の男女→ 共通して倒れやすい。

一般的には「若い男性が倒れやすい」と言われますが、女性も例外ではありません

「若い=強い」じゃない。「若い=VVRリスク高い」です。

「わー、私、VVR起きたわ、まだ若いってことね」って冗談を言う余裕はありません。 

特に

  • 採血前に緊張が強い

  • 過去に倒れた経験がある

  • 睡眠不足・空腹・脱水

こんな背景があると、ぐっとリスクが上がります。


■ 現場でやっていること

問診=最も高い効果を持つ予防策

「過去に倒れたことはありますか?」「今日は食事取りましたか?」

たったこれだけで、リスク評価ができます。当院では在位(座った状態)で採血します。発生率から全員が臥床するのは効率が悪すぎます。リスクが高いときには臥床して採血します。点滴のときには当然臥床しています。


■ 採血で倒れにくくなるために

患者さんへ伝えたい3つの行動

  1. 採血前に伝える
    「採血が苦手です」「倒れたことあります」など、遠慮なく。

  2. 無理に見ない
    血液や針を見てしまうと、交感神経が急に興奮 → 失神リスクUP。

  3. 呼吸を意識する
    ゆっくり吐く。これが自律神経を安定させます。


委員会がきっかけで、また学ぶことができましたね。こういった気づきや学ぼう、改善しようとするスタッフに恵まれて幸せです(涙)
私たちは、採血という小さな医療行為に対してでも、「学び続ける仕組み」を整えています。定期的なスタッフ教育、ケース共有、問診の徹底。

これは、ただのルールではありません。安全を守る文化です。

(引用:医龍-Team Medical Dragon-)


おわりに

採血で倒れることは、珍しいことですが、倒れた時は焦るものです。でも、「きちんと理解する」と怖くなくなります。

医療者が学び続けることが、患者さんの安心につながる。

リスクはゼロにはなりませんが、効率性とより安全性のバランスの高い医療を提供していきたいと考えています。ゼロリスクにこだわると極端に効率性が下がります。今の医療体制ではゼロリスクは無理ですので、いかに高いバランスを実現できるかを目標にしていきたいですね。


参考文献

1.病院採血室における採血に伴う気分不良の発生状況
市村 直也,赤羽 あゆみ,甲田 祐樹,東田 修二 東京科学大学病院 検査部 医学検査 Vol.74 No.1, 2025, pp.226–231

2.当診療所における採血関連合併症の発生状況とリスクマネジメントの取り組みの経過
真柄 明子 総合健診学会誌(HEP) Vol.45 No.2, 2018

3.当院採血センターにおける VVR 発生状況
藤巻 恵理子,山羽 亜実,森部 龍一,塚本 実奈子,高尾 晶子,谷 浩也,中山 享之 愛知医科大学病院 採血センター

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