うんこで死ぬ -死亡リスクが上昇する便秘に対する正しい排便ケア-

便秘は「命に関わる」症状です

便秘は「よくある不調」「恥ずかしいから言わない」という人がいますが、最新研究では、便秘が 長期的に死亡リスクを上昇させる ことが示されています。

・有病率は 7人に1人(約14%):皆の悩みですね。

・便秘が続く人は、15年間で 死亡リスクが 23% 上昇:自分は体力低下→便秘→死亡リスクかもと疑っています。根本は体力低下かもしれません。

・排便回数が「4日に1回以下」では 心血管イベント(心筋梗塞・脳卒中)リスクが 1.4倍

便秘は「不快症状」ではなく 生命維持に関わる問題 です。いやでも、まずはいま不快ですからどうにかしたいですよね。


便秘の定義

便秘とは

本来体外に排出すべき便を「十分量」かつ「快適に」排出できない状態

を指します。

ポイントは回数ではなく です。

・毎日少しだけ出ている → 便が残っていれば便秘
・いきまなければ出ない → 排便障害
・適度に溜まってから、楽に出るのが理想

便秘とは 「出ていない」ではなく「出しきれていない」状態 と考えます。


排便評価の基本:まずは状態を見極める

排便支援には、以下の情報が必須です。

・排便回数
・便の硬さ(ブリストル便性状スケールを使用:Bristol Stool Form Scale:BSFSって略するとなんとなく中2的にイケてる感がするな…)
・いきみ、痛みの有無
・直腸診で、便が直腸にあるかどうか

多くの便秘は、薬を出す前に「便がどこにあるのか」を確認することが重要です。


新しい選択肢:直腸エコー

直腸診がためらわれる場面では、直腸エコー(超音波) が有効です。結構なトレンドワードで、看護師さんがすることを想定しているようです。

・プローブを軽くお腹に当てるだけ
・直腸内に便があるかを 非侵襲的に 判断できる
・硬便かどうかもイメージで把握できる

直腸診が心理的にハードルが高い患者さんにとって、直腸エコーは負担の少ない評価方法 です。ご希望があれば院長まで。


排便支援プロトコル

排便がないときは、次の順序で判断します。

  1. 直腸診または直腸エコーで便の位置と硬さを評価する

  2. 直腸に硬い便があれば
    ・先に便を取り除く
    ・グリセリン浣腸、レシカルボン坐剤を使用

  3. 直腸に柔らかい便があるが出せない場合
    ・浣腸または坐剤で排便を促す

  4. 直腸に便が降りていない場合
    ・腸の動きを良くする薬(グーフィス)を検討。併せて便を硬くする薬を使用していれば減量する

大切なのは 便の性状と場所を見て薬を選ぶこと です。ちなみに浣腸は必ず立ってしては駄目です!面倒でも左側臥位でしましょう!直腸が損傷し、お腹の中がうんこまみれになって、腹膜炎を起こし、強い腹痛と共に結構な割合で死にます(直腸が破けやすく、浣腸が必要だと言う前提が死にやすい要因でもありますが)。


薬剤の特徴と使い分け

当院で使用する主な薬剤は次のとおりです。

【硬い便のとき】
マグネシウム:シェア1位。便に水を引き込む作用。6円という驚異的コストで最も安く、第一選択。

モビコール(PEG)
便の「硬さ」を調整できるため、固まる便秘や下痢と便秘を繰り返すタイプに適している。ポリフルとコロネルが手に入らないので過敏性腸症候群にもやむなく使用。

ラグノスゼリー:腎機能が悪いときや嚥下状態が悪いときに使用。

【便が降りてこないとき】
グーフィス(エロビキシバット):シェア2位。腸の動きを改善するタイプの中では耐性がつかない唯一の薬剤

【その他】
リンゼス:硬便が強いときに使う。コンプライアンスが良い(1日1回)。

アミティーザ:食後に飲む。副作用として悪心があることがある。

【注意が必要】
センノシド・ピコスルファート・大黄甘草湯・防風通聖散
 大腸を刺激する薬。長期使用は 大腸メラノーシス(腸の色素沈着)や依存につながる。

便秘治療の考え方は「薬を増やす」ではなく「便の状態に合った薬を使う」です。


生活習慣で改善する方法

薬に頼らず、生活習慣で改善できる部分もあります。

  1. 食物繊維を不足している場合に増やす:取りすぎても意味はありません。

  2. おすすめの食品(酪酸菌を増やす食品): ぬか漬け、海藻類(わかめ、昆布、ひじき)、果物(キウイ・バナナ)、もち麦、玄米

  3. キウイ、プルーン、オオバコ(サイリウム):便秘改善に有効とされる食品です。

  4. 水分は「食物繊維が十分な上で」効果がある:1.1Lと2.1Lでは、食物繊維25gを取った場合のみ効果が出ます。

  5. 腹壁マッサージ:週5日、15分で効果があります。

  6. 有酸素運動:ウォーキング、散歩、サイクリングなど。

やみくもに水だけを増やしても、便は軟らかくなりません。大切なのは 組み合わせ です。ちなみに体幹ストレッチはエビデンスがないとのことでした。

また、排便スタイルも大切です。直腸の靭帯の関係で前かがみ、和式便所スタイルがいいんですね。逆に言えば、うんこが漏れそうな時はこの姿勢になってはいけないってことですね。(余談:うんこを我慢できる研究はある程度ニーズがありそうな気がする。)


まとめ

・便秘は死亡リスクが上昇する
・便秘の本質は「出る量と快適さ」
・薬を使う前に必ず 便の場所を見る
・直腸エコーは新しい、負担の少ない評価法
・薬は「便の状態に応じて」選択する
・生活習慣で改善できる部分も多い

一人で悩む必要はありません。排便ケアは、生活支援であり、生命維持です。

参考文献:日本内科学会雑誌 2024年 113 巻 10 号2023年 112 巻 9 号 

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