医師が説明不足になる理由とは?


医師と患者のコミュニケーションにおいて、しばしば患者さんは「説明が足りない」と感じられることがあります。逆に、「色々言われたけどよーわからんかった」もあります。どちらも説明不足に感じますよね。

患者側が納得できないまま、治療に進むのは不安が残ります。しかし、実は医師が意図的に説明を控えることには、いくつかの理由があることも。それらを理解することは、患者さん自身の安心感や信頼につながるかもしれません。

1. 「診断が確定していないから」

診察を受けた際、最初に「これが病気です」と断言されることが少ないのは、その病気の診断が確定していないからです。医師は最初に疑わしい症状を挙げ、必要な検査を進めていきます。確定診断を下す前に早急な情報提供をすると、後に診断が変わった場合に混乱を招きかねません。

特に医師の仕事は、診断に至るまでの過程に時間を要する場合が多いため、診断が確定しない段階での説明は慎重に行われます。このため、最初の説明は、どうしても抽象的なものになりがちです。

可能性があるAとBいう病気について説明すると、患者さんはだいたい混乱します。情報は過多なのに説明は不足しているんですね。

医療には「鑑別診断」という考え方があります。病気が疑われた場合、それが何か特定の病気か、あるいは他の可能性も考慮する必要があります。この過程では、最初の段階での説明はどうしても不完全になりがちです。特定の病名を即座に伝えるのではなく、他の病気の可能性を考慮した上で最適な治療方法を選んでいきます。

そのため、診断が確定しない段階では、患者さんに十分な説明ができないことがあるのです。と、いうことでよく使うフレーズとしては、「Aという病気について治療しているが、αという症状が出てきたら診断を見直す必要がある」ですね。

2. 「患者さんに与える情報の量の問題」

先程の話につながりますが、医師が説明を控える理由の一つに「情報量の調整」があります。病気の説明をする際に、どの情報をどれだけ伝えるかは非常に難しい問題です。たくさんの情報を詰め込みすぎても、患者さんがすべてを理解できないことがありますし、逆に必要な情報を省くと説明不足だと感じられることもあります。

医師が説明を控えるのは、患者さんにとって最も必要な情報を、適切なタイミングで伝えるためでもあります。情報が多すぎると混乱を招き、逆に不安を与えることもあります。例えば、可能性が低い致死的な病気などを十分に説明すると不安感が強くなってしまいます。

法的には分厚い場合分けされた説明文書が必要なのかもしれません。ただし、あまり世の中を良くするとは思えませんね。

3. 「時間的制約」

現場の医師は、多くの患者を診察しなければならないという時間的な制約を抱えています。特に外来診療などでは、患者一人ひとりに割ける時間は限られています。このため、初期の説明が簡潔になり、詳細な説明は後日改めて行われることが多いのです。

忙しい診療の中で、説明するべきポイントを絞る必要があるため、どうしても「詳しく話す時間がない」と感じることがあるのです。しかし、これは医師が重要な情報を後回しにしているわけではなく、限られた時間内でできるだけ要点を伝えようとする努力の一環です。

先程の、分厚い説明書をお渡しして「読んどいてくださいね」と言われて、患者さんは説明が十分と感じるのでしょうか。自分はそうなるとは思えませんね。

4. 「患者さんの精神的・身体的状態を考慮して」

患者さんの体調が優れない場合、過度に詳細な説明を行うことが逆効果になることもあります。病気の深刻度や治療法に関する情報を、一度に全て説明しても理解しきれないことがあります。特に急性の症状や、強い不安を抱えている場合は、医師が最初に伝えるべき情報を選び、患者さんの状態が安定してから、詳細な説明を行うことが一般的かなと考えています。

自分なら、インフルエンザで高熱が出て体調が悪い時に、インフルエンザウイルスとは!みたいな話は聞きたくないですね。

また、心理的なプレッシャーをゼロにはできませんが、可能な限り少なめに、患者さんが受け入れやすい形で説明することも、医師の配慮です。これは昔の医師より弱くなっているかもしれませんね。インフォームド・コンセントと言う名前のもとに「情報はただの情報である」という認識が強まっているかもしれません。

結論:医師が説明不足になる理由は「患者さんのため」…のこともある…。

医師が説明不足になる理由は、決して患者さんを無視しているわけではなく、むしろ患者さんのために最適な方法を選んでいるからです。勿論忙しさもありますが…。診断が確定していない場合や、過剰な情報を与えないように配慮しているからこそ、説明が不十分に感じられることがあります。

このような理由を理解し、もし説明が不足していると感じた場合には、積極的に質問をすることが大切です。医師は患者さんの理解を深めるために、さらに詳しく説明をしてくれるはずです。患者さんと医師が信頼関係を築き、お互いに情報を共有することが、最良の治療につながります。

ちなみに、自分が患者さんがよく知りたいと思っていると感じる情報は

  1. どのくらいで治るのか
  2. 治療の選択肢
  3. 療養のこつ
  4. 注意すべき症状
かなと感じています。特に質問がなくても、このことを伝えておけば患者満足度があがるかもしれませんね。
あなたが患者さんならば「質問はないですか?」と言われたときには聞いておくと良いかもしれません。ちなみにこの質問はがん患者さんの質問促進リストも参考にしました。

余談

患者さんが求めているものの本質は説明なのでしょうか?
信頼がおける医者かどうか、任せて良い医者かどうかかもしれません。
そもそも情報の格差が大きいのが医療の世界です。説明時間がなかなか取れない制度の中で、単純に十分な情報の受け渡しがなされたときに、クレームが改善するのかに疑問を持っています。

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