たびょうをたべよう!


たびょうって…何!?
食べれるの?食べれません!今回のテーマは「たびょう」って多病です。
グルメ特集ではなくすみません!

マルチプロブレム(マルプ)症例って「病気が多いこと」!…ではない

一般に「マルチプロブレム」と聞くと、「高血圧も糖尿病も心臓病もある人」というイメージを持たれるかもしれません。しかし、病名がいくつ並ぶかは本質ではありません。

本当に問題が表面化するのは、「治療同士がぶつかるとき」です。

例えば、心不全(心臓のポンプ機能が弱る病気)がある人に対しては、体の余分な水分を抜く薬(利尿薬)を使います。しかし利尿薬を増やすと腎臓に負担がかかります。腎臓の働き(腎機能)が悪い人では、薬を増やせば心臓は楽になるかもしれませんが、腎臓がさらに悪化する可能性があります。

このとき医師は「どちらを優先するのか」という判断を迫られます。

糖尿病でも同様です。血糖値を厳しく下げれば合併症予防には有利です。しかし高齢者では低血糖(血糖が下がりすぎること)が転倒や意識障害につながる危険があります。

つまり、治療が「足し算」ではなく「バランス調整」になります。
この“綱渡り”が始まったとき、マルチプロブレム症例だねぇと認識します。
ちなみに良い臨床医って、このバランス調整が上手な人だと思っています。抗がん剤の量やタイミングの調整をするとかですね。

マルプは医学的問題だけではないっ!

「医学的問題が2割」って感覚を共有できるDrは少ない。というのは医学的問題を軽視しているわけではありません。むしろ医学的問題は重要です。ただし、医学的問題にはある程度の枠組みがあります。

医学には研究データがあります。
・この治療で延命効果はどの程度か
・副作用の発生率はどれくらいか
・この病気の5年生存率はどれくらいか

完全ではありませんが、一定の見通しがあります。医療者はその範囲の中で判断できます。

一方、家族や社会的な問題は、数値化できませーん。

・介護する娘さんが仕事を辞めるかどうか
・兄弟間の意見対立がどこまで深刻か
・経済的余裕がどれくらい持続するか
・「延命は望まない」と言った本人の言葉がどこまで揺らがないか

これらには統計的な答えはありません。しかも時間とともに変化します。だから難しいのです。これは人にとっては面倒に感じると思いますし、医師の仕事!とは言い切れないところもありますよね。実際、診療報酬は…ついていないと思う。

ガイドラインが機能しませんっ!

医療の「ガイドライン」とは、専門家がまとめた標準的な治療方針です。しかし多くは単一疾患を前提に作られています。

例えば「心不全ガイドライン」は心不全の最善策を示します。「糖尿病ガイドライン」は糖尿病に最適な治療を示します。

しかし、両方を同時に満たせない場合があります。

このとき、医師はガイドラインの“正解”をそのまま適用できません。そこで使うのが倫理的整理です。

医療倫理の四分割表とは、

  1. 医学的に効果があるか

  2. 本人が望んでいるか

  3. 生活の質はどうなるか

  4. 家族や社会状況はどうか

この四つを分けて考える方法です。

例えば、医学的効果がわずかで、本人が強く望まず、家族の負担が大きいなら、治療縮小は合理的です。逆に医学的効果が限定的でも、本人が強く希望し、家族が支えられるなら、短期間継続する選択もありえます。

ここでは「正解」ではなく「納得解」を探します。

ケアマネジャーの情報は蜜の味

医療者が最も見えにくいのは「生活の連続性」です。

診察室では、患者さんは整った姿で来ます。しかし、

・夜間何回トイレに起きているか
・家でどれだけ動けているか
・配偶者は本当に支えられているか
・キーパーソンは誰か
・その人は理性的に判断するタイプか、感情優位か

こうした情報は診察室では見えません。ケアマネジャーは生活の現場を知っています。医療倫理の、2,3,4の情報を持っているのがイケてるケアマネージャー、イケアです(ワタクシが今命名しました)。医療判断は、生活情報が入って初めて現実的になります。

例えば、内服を増やす医学的合理性があっても、「薬を管理できない状況」なら意味がありません。生活の実態が治療の前提条件になります。

意思決定支援って

家族と本人の意向が一致している場合、勿論話は早い!問題は意見が割れたときです。

原則は本人の意思尊重です。しかし感情的対立が強い場合、即断はかえって不信を生みます。そこを無理やり進むと、その後の協力が得られなくなります(涙)家族だからこそ、感情的対立は強まるんですよ。

そこで使うのが「時間限定の試行」や「量限定の試行」です。

・1週間だけ治療継続
・薬を半量で試す
・短期間入院して効果を見る

これは“逃げ”ではありません。結果を見て再評価することで、議論が具体化します。感情は抽象的ですが、事実は具体的です。具体的な経過が、合意を促します。

マルプからのポリファ

ポリファってポリファーマシー。ポリファーマシーは「薬が多すぎる状態」です。一般に6剤以上でリスクが上がるとされます。

薬が増えると、

・副作用が増える
・薬同士が干渉する
・飲み忘れが増える
・食欲低下やふらつきが起こる
・転倒リスクが高まる

しかし薬が増える背景には「専門分化」があります。各専門医は自分の担当疾患に最善を尽くします。その結果、全体最適が崩れることがあります。総合的に見る医師の役割は、「全体としての負担」を調整することです。勿論、各専門医の先生方は効果と副作用を見て処方しているのでそれは否めません。

注意すべきは局所最適が全体最適になっていないとき。ですね。

欠かせない治療負担という視点

治療負担とは、「治療が生活に与える重さ」です。

・月何回通院しているか
・待ち時間は何時間か
・薬は何種類か
・1日何回服用するか

しかし最も重要なのは「本人の主観」です。表面上は不満を言わなくても、実際は疲れていることがあります。だから定期的に確認します。内服回数が別に負担にならない人もいます。よく知られていますが、食前の薬は施設のスタッフさんからすると負担ですよね。

治療が人生を圧迫していないか。これは常に問い直す必要があります。

ゆれる思い

ZARDは揺れる想いで、思いちがいではりますが。10年前と比較して、延命よりも「意味のある時間」を重視する人が増えています。

医療技術が進歩し、情報が広がり、人生の終盤を主体的に選びたいという意識が強まっています。中には安楽死を口にする人もいます。日本では法的に認められていませんが、それだけ「苦痛を避けたい」という思いが強いことの表れです。

マルチプロブレム症例は、医学の問題であると同時に、社会の価値観の問題でもあります。

まとめ

マルチプロブレム症例とは、

・治療同士が衝突し
・家族の状況が影響し
・生活の負担が積み重なり
・価値観の選択が求められる状態

です。

これは医学だけでは解決できません。医療、介護、家族、地域が一つのチームになって初めて支えられます。チームになろうよ。

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