がん患者さんの質問促進リストと意思決定支援ガイドのご紹介
先日のがん医療における患者とのコミュニケーションガイドラインを紹介しました。その中でも推奨度が高いとされている2つの方策を紹介したいと思います。
がん診療の場面で活用いただける「質問促進リスト」と「意思決定支援ガイド」をご紹介します。これらのツールは、患者さんやご家族、ケアマネージャー、訪問看護師の方々が治療をより深く理解し、安心して意思決定を行えるようサポートしてくれます。
1. がん患者のための「質問促進リスト」とは?
「質問促進リスト」は、がん診療のさまざまな場面で患者さんやご家族が医療者に尋ねやすいよう、よくある質問をまとめたリストです。「診断」「病状」「検査」「治療」「生活」などのカテゴリーごとに典型的な質問が分かりやすく整理されており、例えば以下のような場面で活用いただけます。
- 診断時: 診断内容や治療の流れを理解する際
- 治療開始時: 治療方法や副作用、生活への影響を把握するため
- 治療方針の変更時: 新たな治療方法や治療目的の確認
- 緩和ケアへの移行時: 痛みや症状のケア、生活サポートの相談
質問促進リストのメリット
このリストを活用することで、患者さんやご家族が何を質問すべきかが明確になります。質問を言葉にできない方や、何を尋ねるべきか分からない方にとって、リストがあることで聞き漏れを防ぎ、不安を軽減する助けとなります。また、必要な情報を網羅することで治療への納得感が増し、安心して意思決定が行えるようになります。
先日早速使用しました。病状説明のときに供覧しながら説明してみました。想定されるイベントなどを共有できて良かったです。しかし、情報量がかなり多くなってしまいます。メモを取りながらの対応が必須な印象です。
2. 「意思決定支援ガイド」の役割と活用方法
意思決定支援ガイドは、特に乳がん治療において公開されているガイドで、治療方法の選択やリスク・副作用、費用、生活への影響までが分かりやすく表形式でまとめられています。(肺癌もあるのですが、有料です。購入は可能です。)
https://www.healthliteracy.jp/decisionaid/DA_Breast_Cancer_surgery_2021.pdf
美容面の懸念や再発リスクなども含まれ、患者さんが生活全体にわたる選択をしやすくなるよう設計されています。意思決定支援ガイドは、特に以下のような場面で利用いただけます。
- 家族と一緒に治療を考えたいとき: 本人が望む場合、家族も一緒に内容を確認しながら決定していくことで、より安心して治療を進めることができます。
- 本人の価値観を尊重するため: 基本的に意思決定は患者さん本人が行いますが、家族は本人の価値観や決定を尊重する立場にあります。本人の望む生活を支援するためにも、家族が意思決定の背景を理解することが大切です。
また、乳がん以外にも胃ろう造設の意思決定支援ガイドが提供されており、胃ろうに関する効果や悩むポイントが記載されているため、治療選択をサポートしやすい内容となっています。ただし、治療の選択によって療養場所が制限される場合もあるため、施設選びや治療選択については事前に確認しておくことをお勧めします。
https://www.healthliteracy.jp/decisionaid/DA_tubefeeding_Japanese.pdf
3. 医療提供者の活用と推奨
「質問促進リスト」や「意思決定支援ガイド」は、医療提供者にも役立つツールです。特に、若手医師や看護師の方々には、患者さんの不安を事前に予測して包括的な病状説明を行うために、内容を確認することをおすすめします。これらのツールを通じて、医療者と患者・家族との情報ギャップが減り、信頼関係が深まると期待しています。
4. がん患者さんと家族、ケアチームの皆様へ
がん治療の進行中に、不安や疑問が湧いてくるのは当然のことです。これらのツールを活用することで、治療を理解し、納得して前向きな治療を続けることができるようサポートしていきます。患者さんご自身だけでなく、ご家族やケアチームの皆様もぜひ活用し、がん治療においてより良い選択とサポートができる環境を整えていただければと思います。
まとめ
がん患者さんやそのご家族が、安心して治療や意思決定が行えるよう、「質問促進リスト」と「意思決定支援ガイド」は非常に役立つツールです。江口医院では、患者さん一人ひとりが安心して治療に臨めるよう、こうした情報を適宜活用し、患者さんのサポートに努めています。
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