医者も看護師も受付もクールなホスピタル
要約
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医療機関の接遇は「医師やスタッフの性格」ではなく、制度・環境に大きく左右される
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救急病院とクリニックでは役割も接遇の形もまったく異なる
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患者側ができる工夫は「空いている時間を狙う」「できるだけかかりつけに時間内受診」「初診は電話では判断できないと理解する」
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医療側も予約制・マニュアル化・DX化などで接遇改善を進めている
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接遇は「誰か一方の努力」で解決できる問題ではなく、制度・環境・患者・医療者がそれぞれ理解と調整を重ねてこそ改善する
なぜ「ぶっきらぼう」に見えるのか
「先生、なんか冷たくない?」「受付・看護師が気持ちを理解してくれない!」
医療機関の口コミあるあるですよね。
実際、医療者自身も「そんなつもりじゃなかったのに」と思うことが多い。短く答える、表情に余裕がない、説明が最小限——その背景には必ず理由がありまする。
一緒に働いてみて、この医者、この看護師、この事務の性格は最悪やなぁ!!って思うこと少ないんですよ。学生時代も皆優しかったですよ。そんな医療者がなぜ口調が悪いのか。職場に出て皆擦れてしまったのか…?!
友達に医療職いますよね?冷たいですか?基本は優しいと思うんです。そんな医療者がなぜ口調が悪いのか。
自分のしくじりドクター
深夜の時間帯。救急外来は満員。医者は一人、看護師も一人。救急車は2台。待合室では発熱の患者が10人以上待っている。
医師:「検査の結果、大きな異常はありません。今日はご自宅で安静にしてください!!」
患者:「え、それだけですか?薬は?説明は?」
患者:「まだですか?」
医師:「緊急性が高い人から順次見ています!!待ってて!!」
やらかして、患者さんや家族と言い争いになったことあります。疲れてメンタルケアまでできないときはそんな口調になるのですが、あとから言い過ぎたなぁと反省して自己嫌悪ってよくあるパターンです。
自分は「重大な病気ではない」と判断しているからこそ、最短の言葉で伝えている。だが患者にとっては「雑に扱われた」と感じてしまいますよね。
この時間に来たなら相当に不安が強い。その不安の元はどこか…まで気が回れば良いのですが、深夜で救急車も来ていると不安のケアまでは手が届きません。医療者からすると…「不安で人は死なない」から。でも、患者さんは「死ぬかも?」と思っていることもありますよね。
誤解
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医師側:最も重要な「問題なし」を伝えた
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患者側:安心するための「丁寧な言葉」が欲しかった
このズレが「ぶっきらぼう」に見える瞬間でもあります。つまり、多くの「冷たい接遇」は性格ではなく、状況と優先順位の違いから生まれたりもします。
制度・環境が生む“口頭接遇”の限界
医療の接遇を理解するには、まず「制度の縛り」も知る必要があります。
電話相談の壁
「熱があるんですけど、どうしたらいいですか?大丈夫ですよね?」
電話口でこう聞かれても、初診の患者に対して医学的に確実な答えを出すのは不可能だ。窓口にいるのは事務員で臨床的な判断の責任を取ることもできない。聴診も触診もできない。ましてや救急搬送が必要な状態かどうかを、声だけで判断するのは危険すぎる。
さらに制度上も、電話再診には診療報酬があるが、初診電話相談には診療報酬がない。つまり、初診の電話対応は「診療行為」とは認められていない。
医療者が電話で詳しく対応しても、正式には「ただの無料相談」扱い。これでは持続可能な仕組みにはならない。自分の仕事を無料で延々と求められたら、誰でも負担に感じるだろう。
待ち時間と評価の矛盾
もう一つの問題は待ち時間だ。2時間待って5分診察、という経験は多くの人がしているはず。患者から見れば「こんなに待たせるなんて接遇が悪い」となるが、制度的には待合室での快適さや説明時間には点数がつかない。評価されるのは「診察行為そのもの」だけ。
そのため、多くのクリニックでは接遇に十分なリソースを割きにくい。制度設計そのものが「時間をかけた接遇」を報酬化していないのだ。
一方、産婦人科は自費診療なので、接遇にリソースをかけやすい。入院中の豪華な食事や豊富な人員配置(医師を除く)も自費診療で回収できやすい。乳腺のマッサージなどもオプションもあったりする。今、出産を診療報酬にするか自費診療にするか協議されているが、診療報酬になれば接遇はぐっと下がるだろう。
救急とクリニックの役割差
ここを誤解すると、接遇への期待値が大きくズレてしまう。そもそも救急病院に接遇を求めてはいけない。期待したらダメ。期待を良い方に裏切られたらラッキーと思っていたほうが良い。
救急病院
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目的:命を救う。不安や安心へのサポート能力は求められていない。
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優先:検査・処置・安全確認
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説明:必要最小限
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接遇:冷たく見えても仕方ない
クリニック
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目的:日常の健康管理、慢性疾患、軽度急性期の診療
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優先:生活背景を含めた相談、信頼関係の構築
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説明:比較的丁寧にできる、かつ再診でサポートしやすく、わからないことも回数を重ねて説明しやすい。
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接遇:患者体験を重視しやすい
つまり、救急に「ホテルのフロント」のような接遇を求めるのは難しい。
本来は、できるだけかかりつけのクリニックを時間内に受診することが望ましい。救急は「最後の安全ネット」なのだ。
誤解を減らすために患者ができること
ここで「患者も努力しろ」と言うと冷たく聞こえるかもしれない。ただ、ほんの少し工夫するだけで、接遇体験は大きく変わりますよ。
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空いている時間や空いているクリニックを狙う
——月曜午前や連休明け、そして祝日の翌週は混雑必至。少し時間をずらすだけで余裕ある対応が受けられる。 -
できるだけかかりつけに時間内受診
——救急に「丁寧な説明」を期待するとズレが生じやすい。慢性疾患や軽度の体調不良はかかりつけで。 -
初診は電話では判断できないと理解する
——制度的にも医学的にも無理がある。
感情面の理解
体調が悪いときに他人に気を遣うのは疲れる。それは医療者も分かっている。だって、睡眠不足のときに患者さんの接遇に気を使うのは疲れるもの。夜間の救急外来なんてお互い体調不良で出会うわけで、そりゃ喧嘩になりますな(自己保身)。
ただし、だからといってスタッフに当たってしまえば、お互いに不快になるだけ。
「スタバの店員さんに八つ当たりしますか?」と考えてみてほしい。正当なクレームは当然だが、八つ当たりは誰も幸せにしない。
医療側ができること(当院の事例)
医療側も「制度が悪い」と言って済ませていいわけではない。自分のクリニックでは以下の取り組みを進めています。
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予約制 ——待ち時間を短縮し、接遇の余裕を確保。混み合うと身体疾患優先、精神疾患、メンタルケアは後回しになる。
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サービス接遇検定に基づくマニュアル化 ——スタッフ間の接遇水準を統一。個人的には当院の受付の接遇は良いと思うんですよね。九州国際ビジネス専門学校の教育の賜物かもしれません。
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説明の紙面化 ——頻度が多い疾患は診察後に渡せる資料を用意し、口頭説明の不足を補う。
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業務のDX化 ——会計や書類作業を効率化し、患者との対話時間を増やす。
接遇のAI化、DX化——既に電話対応がDX化しているところもありますよね。AIチャットボットがメンタルサポートする時代はもう少しで来そうです。
これらの取り組みは、患者体験を改善するだけでなく、スタッフの疲弊を防ぎ、働きやすい環境をつくる。接遇は「心がけ」だけでは続かない。仕組みの改善によって初めて持続可能になる。
接遇にまつわる“すれ違い”の実例
ケース1:電話での相談
患者:「子どもが39度の熱です。家で様子を見ていいですか?」
医師:「診てみないと分かりません。受診をお願いします」
——患者からすれば「冷たい回答」。だが医師からすれば「診ないと判断できない」。
ケース2:救急での発熱
患者:「インフルエンザですか?薬を出してください」
医師:「今の段階では検査しても正確には出ません。今日は安静で」
——患者は「説明不足」と感じるが、実際には検査の限界を踏まえた医学的判断。
こうした場面は、日常的に繰り返されている。患者は「もっと話してほしい」、医療者は「限られた中で最善を尽くしたい」。このギャップを埋めるのが接遇の課題。
第7章 これからの接遇は良くならない、良くなるなら…
日本の医療現場は、ベッド過剰の人手不足です。時間の余裕がなければメンタルケアはできないですよね。
競合するクリニックが多ければ多いほど接遇は良くなります。接遇に診療報酬はつきません。しかし、提供する医療が同等であれば、差別化するためにも接遇に力を入れることになります。ただし、医療機関の倒産は増加傾向です。競合がいなくなる時代に接遇は改善しません。競争原理が働かない町に数件の救急病院、行政所属の医療機関、田舎のクリニックは接遇を改善する動機つけが少ないんですよ。
その中で接遇を高めるには、以下の三つの理解と調整が必要になる。
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患者が制度や環境を少し知ること
——「なぜ冷たく見えるのか」を理解すれば、不満は減る。 -
医療者ができる範囲で接遇を意識すること
——仕組みや工夫で改善できる余地はある。
——接遇はAIとDxにさせる(個人的にはここが要点になりそう) -
制度的に説明や時間に評価をつけること
——現行制度では「説明時間」は無評価。ここを変えないと根本的な改善は難しい。
第8章 まとめ
医療機関の接遇は「人柄」や「努力」だけでなく、制度・環境に強く左右される。基本、人柄は皆いい人ですよ。
救急とクリニックでは役割も接遇の形も違い、初診電話相談には制度的な壁がある。
患者にできるのは、空いている時間を狙い、かかりつけを時間内に受診し、電話だけでは診断できないと理解すること。
医療側にできるのは、予約制やDxなどで患者との時間を生み出すこと。
「冷たい」と感じる接遇の背景には、誤解や制度の制約が隠れています。これをお互いが理解することで、余計な不満を減らし、現実的に良い医療体験を作ることができるかもしれません。
接遇は「医療者の努力」だけで成立するものではない。社会全体での理解と制度の改善があって初めて、持続可能な形になります。しかし、おそらくそれは難しいので、接遇はAIとDxになって行くのでは?と感じています。
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