発熱や感冒時に受ける内科検査の流れとは?診断を確実にする最新情報 日本内科学会雑誌 2023/11月号を参考に
1. なぜ内科検査が重要なのか?診断の確実性を高める理由
病気の診断は、患者の症状や病歴からある程度予測を立てることが可能ですが、これだけでは不十分なことも多いです。検査を行うことで、以下のようなメリットがあります。
- 診断を確実にする
病歴や症状だけでは判断が難しい場合でも、検査結果を基に正確な診断が可能になります。 - 適切な治療を開始できる
例えば、細菌感染かウイルス感染かを見極めることで、抗生剤の不要な使用を避けられます。 - 無駄な治療を減らす
患者に不要な負担をかけず、治療の効率化が図れます。
2. 一次検査と二次検査の違いとは?簡単に解説
内科で行う検査は、大きく「一次検査」と「二次検査」に分けられます。
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一次検査(スクリーニング検査)
簡単な血液検査やPOCT検査(後述)、尿検査を行い、全身状態や感染症の有無を確認します。
- 例:白血球数の測定(細菌感染症では増加、ウイルス感染症では減少することが多い)。 -
二次検査(精密検査)
一次検査の結果を踏まえて、詳細な診断を行うための検査です。二次検査の一部は当院でも可能ですが、不可能な場合は適切な医療機関に紹介します。
- 例:CT検査(肺炎や膿瘍の確認)。ホルモン検査や膠原病のチェックなど
3. POCT(Point of Care Testing)とは?迅速診断の魅力
正式名称:Point of Care Testing(迅速診断検査)
簡単な説明:診察室のすぐ近くで行える検査で、短時間で結果が出ます。
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メリット
- 短時間で診断が可能:例えば、インフルエンザや新型コロナウイルスでは10-15分程度で結果が出ます。
- 患者の負担軽減:病院での待ち時間が短くなるため、診察がスムーズに進みます。 -
当院での活用例
当院ではインフルエンザや溶連菌、マイコプラズマ感染症などを特定する検査キットを導入し、迅速な診断を実現しています。
また、在宅医療では、ポータブルエコー、ポータブル心電図も使用しています。
4. MDW(Monocyte Distribution Width)の役割と可能性
正式名称:Monocyte Distribution Width(単球サイズ分布幅)
簡単な説明:血液中の免疫細胞(単球)のサイズを調べる検査で、感染症の早期発見に役立ちます。
- 新しい発見
MDWは、敗血症の早期発見やCOVID-19重症化の予測に有用とされ、FDA(アメリカ食品医薬品局)でも補助診断ツールとして認可されています。 - コストパフォーマンス
通常の血液検査に追加する形で測定可能で、費用対効果が高い点も注目されています。
5. 現場の課題と検査体制の工夫
- クリニックの検査機能
一般的なクリニックでは血液検査を即時に行う設備がない場合があります。このため、患者の全身状態や地域の流行状況や日々の培養検査から得られた推定される病原体を元に診断を進める必要があります。 - 抗生剤の使用と誤解
一部の患者は「抗生剤を飲めば治る」と誤解している場合があります。しかし、風邪などの多くはウイルス感染が原因であり、抗生剤は無効です。この誤解を解消するためにも、適切な診断と説明が重要です。
6. 当院の強みと地域医療への貢献
当院では以下の点を重視しています。地域医療に貢献しています。
- アクセスの良さ:Web問診などを取り入れ、医師は検査の必要性を来院前に検討することができます。POCT検査も揃っており、比較的スムーズに診療を行えています。肌感覚ではありますが、感染症の患者さんに対する診療時間は30分ほどです。
- クリニックと大病院の役割分担:重症患者は大病院へ、軽症患者は当院で診療することで、地域全体の医療を効率化します。
まとめ
内科で行われる検査は、発熱や感冒などの症状に対して正確な診断を提供する重要な手段です。ただし、闇雲に行わずに病歴と身体所見で検査前確率を考えながら対応しています。当院では、バランスが難しいのですが、POCTを活用し、患者様に迅速かつ的確な診断を目指しつつ、非典型的な症状や経過の時には一次検査を行ないながら対応しています。検査は適切に活用し、地域の皆様に安心して医療を受けていただける環境を目指しています。
参考文献:日本内科学会雑誌 112巻11号
https://www.jstage.jst.go.jp/browse/naika/112/11/_contents/-char/ja
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