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RSVは高齢者にとっても危険!インフルエンザとの違いと予防策を解説

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1. RSVとは?高齢者にとっても危険な理由 RSV(呼吸器合胞体ウイルス: respiratory syncytial virus )は一般的に乳幼児の感染症として知られていますが、 高齢者にとっても深刻なリスク があることをご存じでしょうか? 実際、 最近の研究 によると、 RSVはインフルエンザと同等、もしくはそれ以上の影響を高齢者に与える ことが分かっています。特に、高齢者では肺炎や慢性疾患の悪化を引き起こし、入院後の再入院率や1年以内の死亡率が高くなることが報告されています。 2. RSVとインフルエンザの違い RSVとインフルエンザはどちらも極論風邪、呼吸器感染症ですが、症状や影響に違いがあります。 このように、 RSVは診断が難しく、特異的な治療法もないため、予防が非常に重要 です。 3. RSVの高齢者への影響と予防の重要性 高齢者がRSVに感染すると、 呼吸不全、肺炎、心不全の悪化 などを引き起こすことがあります。さらに、 入院後の再入院率が RSVの方がインフルエンザよりも高い(34% vs 28.9%) 1年以内の死亡率も RSVの方が高い(12.9% vs 10.3%) 4. RSVワクチンについて 2023年に RSVワクチンが承認 され、高齢者の重症化を防ぐ手段として推奨されています。 A) RSVワクチンの効果はどれくらい? RSV(呼吸器合胞体ウイルス)による感染症を防ぐために、新しく開発されたワクチンが「アレックスビー筋注用」です。このワクチンを接種すると、以下のような効果が確認されています。 重症化を大幅に防ぐ! RSVによる 肺炎や重症呼吸器疾患を防ぐ効果が82.58% RSVによる 急性呼吸器疾患の予防効果は71.71% つまり、ワクチンを接種することで、 RSVによる重い病気になるリスクを約80%も減らせる ことが確認されています。 B) ワクチンはどんな人が受けられる? 60歳以上のすべての人 50歳以上で、以下のリスクがある人 慢性肺疾患(COPD・喘息 など) 心疾患(心不全・狭心症 など) 糖尿病 肥満 慢性腎臓病・肝疾患 ※ 1回の接種でOK! (現時点では追加接種の必要はなし) C) 副反応はあるの? ワクチン接種後、一時的に以下のような副反応がみられることがあります...

家族で話そう、これからの医療とACP 〜高齢者救急の最新提言2024〜

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超高齢社会の進行に伴い、家族や医療者が高齢者の急変時に適切な判断を下すことは難しくなっています。特に、救急医療の現場では、本人の意思に沿わない処置が行われることも少なくありません。今回発表された「 高齢者救急問題の現状とその対応策についての提言2024 」は、こうした問題を解決するために、アドバンス・ケア・プランニング(ACP)の推進や、緊急時の対応マニュアルの整備などを提案しています。 このブログでは、個人的な提言のポイントを解説し、家族がACPを進めたくなるような理由や具体策について掘り下げます。また、施設の現場の悩みも追記しています。 詳細は本文を見ていただくと、より深く理解できるはずです。介護中の家族、研修医、医学生(在宅医療や救急外来に行く前がオススメ)、看護学生、施設管理者、ヘルパー、ケアマネージャーなど広く皆さんにお勧めできる内容になっています。 この提言の秀逸なところは、各コラムが勉強になるところです。DNARや延命治療について軽く紹介していますが、本文のほうが詳細に解説されており勉強になります。 1. ACP(アドバンス・ケア・プランニング)の推進が必要な理由 高齢者が突然の病気や事故で救急搬送される際、本人の意思が確認できない状況は珍しくありません。 こうした場合、家族は「この選択が本当に良かったのか?」と深い後悔や罪悪感に苛まれることが多いのです。 最も悪いケースとしては、 本人:侵襲的な延命治療をしたくないのにされる。 家族:責任が取れない、取りたくないから、延命治療をする。したあとに後悔する。 社会:医療資源が圧迫され、救急部門が疲弊する。 そこで、ACP(アドバンス・ケア・プランニング)が重要になります。ACPとは、本人が望む医療やケアについて、家族や医療者と繰り返し話し合い、あらかじめ方針を決めておくプロセスです。 家族がACPを進めるべき3つの理由 後悔を減らすために 家族が本人の希望を把握していれば、急変時の対応に迷うことが減り、「あのときこうすればよかった」という後悔も少なくなります。特に、DNAR(Do Not Attempt Resuscitation: 心肺蘇生を希望しない指示)のような選択は、家族の心理的負担が大きいため、事前に話し合っておくことが非常に効果的です。急いで決めることは心理的負担がすごく大きいです。 ...

在宅医療における排泄ケアと訪問看護の最新動向 — 日本在宅医療連合学会誌 Vol.6 No.1 を読んで

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はじめに 在宅医療の現場では、「排泄ケア」や「訪問看護」の質が患者のQOL(生活の質)に大きく影響します。今回は、日本在宅医療連合学会誌 Vol.6 No.1 に掲載された論文を読み、その内容から見えてきた課題と改善策について考察しました。 要点 排泄ケアプリントをゲットせよ 退院直後は特別訪問看護指示書で自宅の長期療養をサポート デジタルモニタリングは有用だがプライバシーへの配慮をどう克服するか 排泄評価にポータブルエコーを活用せよ 1. 在宅認知症高齢者の排泄ケア研修の効果 概要 介護職員25名を対象に、排泄ケアの自己効力感と実施状況を評価したところ、自己効力感は有意に向上したものの、実施状況には有意な変化は見られませんでした。特に、「信頼を得た支援者として関わる」「排泄の困りごとを傾聴し共感する」という項目での向上が目立ちました。 この論文は、排泄ケアの学習シートが秀逸です(P3)。医学生、研修医の先生方も一度目を通しておくと良いと思います。 疑問が残るのは、自己効力感は向上したのに、実施状況が改善しなかった理由でしょうか。実施が進まない原因(時間や人手の不足など)があるのでしょうか。まぁ排泄ケアは患者さん、利用者さんのニーズありきなので、自信が付いたから増えるものでもないような気がします。 2. 訪問看護の回数と入院・施設入所の関係 概要 訪問看護開始2週間での訪問回数が多いほど、入院や施設入所のリスクが低下することが示唆されています。具体的には、訪問回数が多いほどオッズ比が低く、特別訪問看護指示書の有効性が確認されました。初期の2週間がうまくいくと「長期的」な入院、入所が減るという内容です。 訪問回数の増加と効果の因果関係について、環境調整、信頼関係、ケア指導が影響しているのではないかと考察で指摘されています。個人的には本人や家族の不安感や信頼関係の構築も効果があるのではないかと思います。 【NG】対象者が自宅患者か、施設患者かがすぐには読み取れませんでした。アウトカムを入院、入所としているので自宅の可能性が高そうですが。 特別訪問看護指示書の必要性を感じる論文ではあります。対費用効果も2週間の特別訪問看護指示書によるサポートと長期的な入院、入所コストなので感覚的には採算があうのではないかと考えています。 3. デジタルケアマネジメントと...