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慢性疾患のケアは家で守れるのか? 佐賀の薬剤師向け講義で伝えた話

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先日、佐賀の薬局さんからご依頼いただき、在宅医療についてお話しする機会がありました。日々の診療の延長線上にある話ではありますが、やっぱり改めて言葉にして伝える時間というのは、自分自身の整理にもなるものです。 在宅医療の講義は先日大学病院でも行っていますので、その資料を転用して…らくちんらくちんとはしてはいません。きっちり薬剤師さん用にリフレッシュしています。キーワード、キースライドは一部用いましたが、やはり対象が違えば求めるものも違います。厚生労働省の資料も用いながら作成しました。 当日は江口医院の待合室を会場にして、薬剤師さんたちが集まってくださってくれました。お茶菓子くらい出そうと思っていたのに、すっかりど忘れしていました。皆さん、緊張しつつも真剣な眼差しを向けていただいたのが印象的でした。質問も多く、こちらが想像していた以上に踏み込んだ内容もあり、現場で悩みながら向き合っている姿が伝わってきました。 講義の中では「慢性疾患の方をどう支えるか」という視点を中心にお話ししました。 在宅医療は、多くの場合“急性期のドラマ”ではありません。ほとんどが、長い時間をかけて病気と生活を両方支える医療です。 病院の慢性期病棟で行われていたサポートを、地域でどう補完していくか。 これは佐賀のように在宅需要が増えている地域だからこそ、避けて通れないテーマです。 ただ、在宅医療には病院と決定的に違う点があります。 それは、 情報が集まりにくい ということです。 血液データも、他院での処方情報も、一つにまとまっていない。薬剤師さんは、患者さんの“断片的な情報”をもとに判断しなければならない場面が多い。講義では、この点を強調してお伝えしました。 それでも、情報が整わない環境だからこそ、薬剤師さんの目の細かさや勘所は大きな価値になります。訪問先での小さな変化や、ご家族の言葉。そこから読み取れるものを、丁寧に医療チームに返していただけるだけで、患者さんの安全は一段と高まります。 講義の最初では、少しだけビジネス的な話にも触れました。理想だけではなく、現実を。在宅医療を続けるには、やはり「持続可能性」が欠かせません。数字を細かく語る場ではありませんでしたが、地域で在宅医療を守っていくために、組織として学び続け、適切に判断していく必要があります。 振り返ってみると、この講義は...

MCI(軽度認知障害)を早く見つけるために知っておきたいこと

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認知症の相談が年々増えるなかで、 「最近なんとなく様子が違うけれど、受診するほどなのか判断が難しい」 「…なんだか、さっきのことを忘れているような気がする…」 そんな場面は少なくありません。 認知症と正常のその中間に位置するのが MCI(軽度認知障害) です。 MCIは認知症とは異なり、日常生活はほぼ保たれていますが、記憶に関する変化が目立ち始める段階です。 そしてもうひとつ重要なのは、 適切な関わりがあれば、正常に戻る可能性が十分にある…というのはいいすぎかな。 進行を遅らせることが出来るという点です。 予防教室などの介入で認知機能が改善した報告もあります。 今回は、現場で関わることが多いケアマネジャーの方々を含め、高齢者支援に携わる方が知っておきたいポイントをまとめました。 1. MCIとはどのような状態か MCIは次の3つが特徴とされています。 本人が「最近忘れやすい」と感じている 客観的にも記憶の低下がみられる 日常生活は概ね問題なく、認知症とは言えない 認知症と比べて生活の破綻がないため、周囲から見ても気づきにくいのが特徴です。 2. 気づきやすい小さな変化 訪問や相談対応のなかで、以下のような変化が見られた場合は、 MCIの可能性を考えてよい場面です。 ● 日常会話ややり取りの中で 同じ質問を繰り返す 予定や日時の混乱が増えてきた 内容を理解するのに少し時間がかかる ● 生活面で 薬の飲み忘れが増える 外出や人との交流が減ってくる 支払いや書類管理のミスが増える、もしくは面倒くさがる ● 家族の気づき 「前よりぼんやりしていることがある」 「何となく生活のリズムが乱れてきた」 これらは劇的な変化ではありませんが、“以前と比べたら少し変わった” という視点が大切です。 3. 早めに受診をすすめるときの伝え方 本人が不安を感じやすい時期でもあるため、強い表現や否定的な説明は避けたほうがよいことが多いです。 例えば、次のような言い方が使いやすいかもしれません。 「最近気になることがあれば、念のため相談してみませんか」 「早めに確認しておくと、進行を防ぐ方法を選びやすくなります」 「今の段階で対応できることも多いの...

11月ケースカンファ グループホームにおけるお看取り — 仕事を通して学び続ける環境

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さて、今月もケースカンファです。前回は 9月11日に開催 しました。前回はケア提供者に注目してみるという学びでしたね。 医療の仕事は日々、様々な患者さんと向き合うことから成り立っています。その中でも特に認知症を持つ患者さんが入居しているグループホームでのケアには、特別な配慮が必要です。 グループホームにおける医療提供の特徴はなんでしょうか!? 医療スタッフが常駐していないこと 認知症の患者さんが入居しているので、環境変化に弱いこと と、自分自身は捉えています。 グループホームは看護師の配置が原則必要ではありません。グループホームによっては日頃の体調管理を看護師に依頼していることはありますが、必須ではありません。点滴などの医療処置を行う場合は、訪問看護ステーションに依頼して特別訪問看護指示書(医療保険)でサポートしてもらう必要があります。しかし、特別訪問看護指示書は原則14日の支援であるため、それを超えた場合は施設でできうる医療のみでご納得頂く必要があります。 ここ!病院の勤務医の先生方も知っておいてほしいポイントです。訪問診療が入っていても、そこで治療ができない施設ってあるんです。 だから、グループホームで最後まで看取りをするところは限られています。その場合は、個人的には介護度が3になった時に医療職が配置されている施設に変更することをお勧めしています。 認知症がベースの患者さんが、環境の変化—特に入院—により、精神症状が悪化する可能性があることはよくあります。環境が変わることで患者さんの心が乱れ、以前は見られなかった症状が表れることもありますから、入院によるリスクを避けるという判断は慎重を要します。 さらに、私たちが直面する現実として、老衰などの終末期においては、入院することで得られる医療的な利益が少ないことが多いです。こうした患者さんの場合、環境の変化が精神面での負担を増やし、身体的にも無理に医療介入を行うことで、逆に質の高いケアが難しくなることもあります。したがって、入院の意義が乏しいと感じることもしばしばです。 ケース緩和を通じて学んだこと 最近、ある患者さんのケースカンファを行った際、その過程で多くの学びがありました。こうしたケースを通して感じたことは、単に医療技術や知識だけではなく、ケアチーム全体としての協力とコミュニケーションの重要性です。 私た...

ぶすりでパタリ ──VVR(血管迷走神経反射)と上手な付き合い方

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当院では看護師業務改善委員会という名のもとに看護師業務の改善に務めております。患者さんのためだったり、効率化のためだったり。今日は、採血のときに起こる 「VVR(血管迷走神経反射)」  が話題になりましたのでせっかくなのでブログにしてみます。 採血って、ルーティンの医療行為です。ただ、診療所でも 年に数回は失神が起きる 。 「そんなに?」と思うかもしれませんが、これはどの医療機関でも起こります。 そして、よく誤解されます。「採血が下手だったから倒れたんじゃないか?」 ──違います。 倒れる理由は 身体の自律神経反応 です。 周りの患者さんも相当焦りますよね。そして、次の採血待ちの患者さんは極度に緊張しています(そりゃそーだ)。 ■ VVRとは? 血管迷走神経反射(Vasovagal Reflex) ざっくり言うと、 血圧と脈拍が急にストンと下がる現象 脳への血流が減る → 一瞬意識が遠のく ほとんどの場合、 数秒で回復し、後遺症は残りません。 科学的には、「痛み・緊張・恐怖・不安」などの心理的ストレスによって迷走神経が刺激され、心拍数が低下することが原因です。 ■ 年齢と性別でリスクが変わる まずそんなに起きません。怖がりすぎないで(笑) 採血室での失神(VVS)発生率: 0.004% → 10万人の採血中、約4人。(大規模研究) 献血環境でのVVR発生率: 0.1〜0.5% ここ、現場の視点で特に伝えたいポイントです。 30代以下の男女 → 共通して倒れやすい。 一般的には「若い男性が倒れやすい」と言われますが、 女性も例外ではありません 。 「若い=強い」じゃない。「若い=VVRリスク高い」です。 「わー、私、VVR起きたわ、まだ若いってことね」って冗談を言う余裕はありません。  特に 採血前に緊張が強い 過去に倒れた経験がある 睡眠不足・空腹・脱水 こんな背景があると、ぐっとリスクが上がります。 ■ 現場でやっていること 問診=最も高い効果を持つ予防策 「過去に倒れたことはありますか?」「今日は食事取りましたか?」 たったこれだけで、リスク評価ができます。当院では在位(座った状態)で採血します。発生率から全員が臥床するのは効率が悪すぎます。リスクが高いときには臥...

うんこで死ぬ -死亡リスクが上昇する便秘に対する正しい排便ケア-

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便秘は「命に関わる」症状です 便秘は「よくある不調」「恥ずかしいから言わない」という人がいますが、最新研究では、便秘が 長期的に死亡リスクを上昇させる ことが示されています。 ・有病率は 7人に1人(約14%):皆の悩みですね。 ・便秘が続く人は、15年間で 死亡リスクが 23% 上昇: 自分は体力低下→便秘→死亡リスクかもと疑っています。根本は体力低下かもしれません。 ・排便回数が「4日に1回以下」では 心血管イベント(心筋梗塞・脳卒中)リスクが 1.4倍 便秘は「不快症状」ではなく 生命維持に関わる問題 です。いやでも、まずはいま不快ですからどうにかしたいですよね。 便秘の定義 便秘とは 本来体外に排出すべき便を「十分量」かつ「快適に」排出できない状態 を指します。 ポイントは回数ではなく 質 です。 ・毎日少しだけ出ている → 便が残っていれば便秘 ・いきまなければ出ない → 排便障害 ・適度に溜まってから、楽に出るのが理想 便秘とは 「出ていない」ではなく「出しきれていない」状態 と考えます。 排便評価の基本:まずは状態を見極める 排便支援には、以下の情報が必須です。 ・排便回数 ・便の硬さ(ブリストル便性状スケールを使用:Bristol Stool Form Scale:BSFSって略するとなんとなく中2的にイケてる感がするな…) ・いきみ、痛みの有無 ・直腸診で、便が直腸にあるかどうか 多くの便秘は、薬を出す前に「便がどこにあるのか」を確認することが重要です。 新しい選択肢:直腸エコー 直腸診がためらわれる場面では、 直腸エコー(超音波) が有効です。結構なトレンドワードで、看護師さんがすることを想定しているようです。 ・プローブを軽くお腹に当てるだけ ・直腸内に便があるかを 非侵襲的に 判断できる ・硬便かどうかもイメージで把握できる 直腸診が心理的にハードルが高い患者さんにとって、 直腸エコーは負担の少ない評価方法 です。ご希望があれば院長まで。 排便支援プロトコル 排便がないときは、次の順序で判断します。 直腸診または直腸エコーで便の位置と硬さを評価する 直腸に硬い便があれば ・先に便を取り除く ・グリセリン浣腸、レシカルボン坐剤を使用 直腸に...

医師が説明不足になる理由とは?

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医師と患者のコミュニケーションにおいて、しばしば患者さんは「説明が足りない」と感じられることがあります。逆に、「色々言われたけどよーわからんかった」もあります。どちらも説明不足に感じますよね。 患者側が納得できないまま、治療に進むのは不安が残ります。しかし、実は医師が意図的に説明を控えることには、いくつかの理由があることも。それらを理解することは、患者さん自身の安心感や信頼につながるかもしれません。 1. 「診断が確定していないから」 診察を受けた際、最初に「これが病気です」と断言されることが少ないのは、その病気の診断が確定していないからです。医師は最初に疑わしい症状を挙げ、必要な検査を進めていきます。確定診断を下す前に早急な情報提供をすると、後に診断が変わった場合に混乱を招きかねません。 特に医師の仕事は、診断に至るまでの過程に時間を要する場合が多いため、診断が確定しない段階での説明は慎重に行われます。このため、最初の説明は、どうしても抽象的なものになりがちです。 可能性があるAとBいう病気について説明すると、患者さんはだいたい混乱します。情報は過多なのに説明は不足しているんですね。 医療には「鑑別診断」という考え方があります。病気が疑われた場合、それが何か特定の病気か、あるいは他の可能性も考慮する必要があります。この過程では、最初の段階での説明はどうしても不完全になりがちです。特定の病名を即座に伝えるのではなく、他の病気の可能性を考慮した上で最適な治療方法を選んでいきます。 そのため、診断が確定しない段階では、患者さんに十分な説明ができないことがあるのです。と、いうことでよく使うフレーズとしては、「Aという病気について治療しているが、αという症状が出てきたら診断を見直す必要がある」ですね。 2. 「患者さんに与える情報の量の問題」 先程の話につながりますが、医師が説明を控える理由の一つに「情報量の調整」があります。病気の説明をする際に、どの情報をどれだけ伝えるかは非常に難しい問題です。たくさんの情報を詰め込みすぎても、患者さんがすべてを理解できないことがありますし、逆に必要な情報を省くと説明不足だと感じられることもあります。 医師が説明を控えるのは、患者さんにとって最も必要な情報を、適切なタイミングで伝えるためでもあります。情報が多すぎると混乱を招き...

さいてき王に俺はなる!

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さいてき王ならぬ、 再適応(ダジャレです)。つまり今回はリハビリテーションについてのお話です。ビジネス用語や心理用語ではレジリエンスとも言えるのではないでしょうか。ワンピースが長すぎて読むのを諦めた私はレジリエンスがたりないのかもしれませぬ。 私自身がさいてき王だなぁと思っている人がいます。車椅子テニスの国枝 慎吾選手です。いや、まさしく王。Wikipediaによると脊髄腫瘍から下半身麻痺に至ったとのこと。素晴らしい選手であることは勿論、素晴らしい人だなと思います。会ってみたい。テニスで対戦して、ぼこぼこにやられてみたい。 さて、本題。先日、改めてリハビリテーションについて学ぶ機会があり、改めて「リハビリテーションとは何か」を考える時間を持ちました。語源はラテン語の habilitare (適する)に「再び」を意味する re- がついた言葉で、「再び適応すること」が本来の意味です。つまり、麻痺や障害を元に戻すことではなく、健康状態に問題のある方が、その人にとって最適に生活できる状態を目指すことがリハビリテーションの本質です。 リハビリテーションというと、「正常の状態に戻す」イメージをもたれている人も多いようです。その欲求は否定はできませんが、本当の意義は再適応です。ここがポイント。