投稿

2025年新型コロナワクチン定期接種のご案内 佐賀市にお住まいの皆さまへ

イメージ
「もうコロナは大丈夫じゃないの?」「今さらワクチンは必要?」 そんなご質問を、診察室でもよく耳にしますのでせっかくなのでブログでもまとめることにしました。 確かに感染者数が大きく報道されなくなり、日常も取り戻しつつあります。けれども実際には、 65歳以上の方や基礎疾患をお持ちの方にとって、新型コロナの重症化リスクは今も続いています 。 さらに、コロナにかかったあと「なんとなくだるい」「息切れが続く」といった後遺症で困る方も少なくありません。当院のスタッフでも息切れが気になる人もいました。 ちなみに、私は年に1回は打っています。打ったあとは気だるくなるので嫌なのですが…。開業医の先生の中には3ヶ月毎打っているって人もいました。仕事が休めないから!って凄い覚悟です。 もう何回も打ったし、ワクチンはもう良いんじゃない? 新型コロナは季節性インフルエンザと比べても、 高齢者における死亡率が高い ことが分かっています。 日本感染症学会らの見解によれば、2022〜2024年にかけてのデータでは、65歳以上で感染した場合の死亡率は0.29%(約300人に1人)に達していました。 一方、同じ期間のインフルエンザによる死亡率は0.05%程度にとどまります。 つまり、高齢者にとっては「コロナはインフルエンザの5倍以上の致死率」を持っているのです。 「若い人は軽く済むことが多いけれど、高齢の方は違う」。 この違いこそ、定期接種が推奨される最大の理由です。個人的な感覚でもワクチンを打っている方が死亡リスクは低くなる印象はあります。勿論、打ってない人でも回復が早い人もいますが、総じて言えばやはり死亡リスクは高い印象があります。 ワクチンの効果 ― 数字で見る安心感 今回の定期接種に用いられる新型コロナワクチンは、 重症化や死亡を防ぐ効果がしっかりと示されています 。 国内データによれば: 死亡予防効果:84% 重症化予防効果:80%以上 接種を受けた方では、受けなかった方と比べて、重症化・死亡のリスクが大幅に下がることが確認されています。 例えば、65歳以上でワクチンを受けていない方の死亡率が0.29%だったのに対し、接種を受けた方はそのおよそ5分の1以下に抑えられた、という報告もあります。 数字で見ると説得力が違いますよね。ただし、この数値な...

2025/09/11 ケースカンファを開催しました

イメージ
さて、今月のケースカンファです! 2025/09/04開催予定が、急な往診が入って11日開催となってしまいました。ところが当日も急な往診が入って、また延期かぁ~と思ったところ全員戻ってきての参加になりました。 医師3人、看護師5人のバトル禁止のまろやかケースカンファですよ! 今回のケースカンファで自分が得られた学びは、ざっとまとめると次の3点です。 多分、看護師さんは看護師さんの視点の違う学びがあるんじゃないかな? 長年関わった人の意見の重み 担当者の固定しすぎ功罪 家族以外の介護者の余力もモニタリングする こうした気づきは、普段の診療ではなかなか表に出てこないものです。ケースカンファに参加することで、チーム全員の思考や経験を一度に吸収できるのが大きな魅力です。参加希望の方は、ぜひ次回の開催に注目してください。 ケースA:延命治療をするかどうかで意見が分かれた場合 仮想のケースですが、患者さんは高齢女性で、延命治療を望むかどうかで家族内で意見が分かれました。妻は自然な経過で見守りたいと考え、子ども世代は積極的治療を希望しました。こうした状況では、医師としては、どちらかに肩入れしにくいのですね。基本的にはキーパーソンにお話をして、家庭内で話してもらう。ただし、 長年関わってきたケア提供者の意見 を「尊重」することが非常に重要です。 自分が感じたのは、「結果論として正しかったかどうか」は後から分かるとしても、その人がどう考えてその意見に至ったかを理解すること自体が、チーム全体の学びになるのではないかと考えました。もう少し意見をシェア出来ると良かったかもしれません。ここで得られたのが学び①、「長年関わった人の意見の重み」でした。 ちなみに、このご時世パターナリズムを使用した意思決定支援は医師は苦手になってきています。説明義務違反がバズっている今日このごろですが、最近の医師はインフォームド・コンセント、意思決定支援が身についているので、「あんたは入院!!」みたいなパターナリズムな言動は不慣れでストレスで、ハイリスクだと認識するんですよね。そこはコメディカルのみなさんも知ってほしいポイントです。 ケースB:本人の希望と介護者の負担のバランス 次に、本人は「好きにさせてほしい」と考えていたケースを想定します。しかし、介護者やヘルパーの負担は既に限界に近く、日常生活...

医者も看護師も受付もクールなホスピタル

イメージ
要約 医療機関の接遇は「医師やスタッフの性格」ではなく、制度・環境に大きく左右される 救急病院とクリニックでは役割も接遇の形もまったく異なる 患者側ができる工夫は「空いている時間を狙う」「できるだけかかりつけに時間内受診」「初診は電話では判断できないと理解する」 医療側も予約制・マニュアル化・DX化などで接遇改善を進めている 接遇は「誰か一方の努力」で解決できる問題ではなく、制度・環境・患者・医療者がそれぞれ理解と調整を重ねてこそ改善する なぜ「ぶっきらぼう」に見えるのか 「先生、なんか冷たくない?」「受付・看護師が気持ちを理解してくれない!」 医療機関の口コミあるあるですよね。 実際、医療者自身も「そんなつもりじゃなかったのに」と思うことが多い。短く答える、表情に余裕がない、説明が最小限——その背景には必ず理由がありまする。 一緒に働いてみて、この医者、この看護師、この事務の性格は最悪やなぁ!!って思うこと少ないんですよ。学生時代も皆優しかったですよ。そんな医療者がなぜ口調が悪いのか。職場に出て皆擦れてしまったのか…?! 友達に医療職いますよね?冷たいですか?基本は優しいと思うんです。そんな医療者がなぜ口調が悪いのか。 自分のしくじりドクター 深夜の時間帯。救急外来は満員。医者は一人、看護師も一人。救急車は2台。待合室では発熱の患者が10人以上待っている。 医師:「検査の結果、大きな異常はありません。今日はご自宅で安静にしてください!!」 患者:「え、それだけですか?薬は?説明は?」 患者:「まだですか?」 医師:「緊急性が高い人から順次見ています!!待ってて!!」 やらかして、患者さんや家族と言い争いになったことあります。疲れてメンタルケアまでできないときはそんな口調になるのですが、あとから言い過ぎたなぁと反省して自己嫌悪ってよくあるパターンです。 自分は「重大な病気ではない」と判断しているからこそ、最短の言葉で伝えている。だが患者にとっては「雑に扱われた」と感じてしまいますよね。 この時間に来たなら相当に不安が強い。その不安の元はどこか…まで気が回れば良いのですが、深夜で救急車も来ていると不安のケアまでは手が届きません。医療者からすると…「不安で人は死なない」から。でも、患者さんは「死ぬかも?」と思っているこ...

喧嘩勃発!?事務長なんかクリニックから出ていきやがれ、こんにゃろめ!!

イメージ
今回は(も?)経営面のお話で患者さんにはあまり興味がないところかもしれませんね。まぁ、医療機関の裏話と思って見て頂ければありがたいです。 この時代は医療機関に取っては厳しい時代です。 2025年上半期の医療機関の倒産は35件となり、 過去最多 のペースで推移している。物価高や人件費などの高騰による収益悪化や経営者の高齢化、建物の老朽化などを背景に事業継続を断念する事業者が相次いでおり、2025年の倒産件数ははじめて70件に達する可能性がある。 帝国データバンク   どれだけ丁寧に診療をしても、財務や人事労務の数字を直視せざるを得ない瞬間が必ずやってきます。佐賀市のような地方都市にあるクリニックでも例外ではありません。ここで頼りになるのが「財務コンサルタント」や「経営企画のサポート」ですが、本当に必要なのでしょうか。今回は自分の体験をもとに考えてみたいと思います。 コンサルタントの定義 ―臨床ではなく経営のサポート ここで言う「コンサルタント」とは、臨床的なアドバイスではなく、 財務・経営企画・人事労務 といった分野を助けてくれる存在です。 自分が依頼しているのは、主に以下の領域です。 財務三表の解析(年次データを整理し、比較・トレンドを提示) 行政資料の読み込みと、そこから導かれるクリニックへの示唆 経営判断の補佐(例えば賞与基準や昇給幅の相談) 内部資料のダブルチェック 時に人事労務に関する助言(昇給の基準、賞与の額の第三者評価) 銀行などの外部機関との付き合い方 厚生局への提出資料についての相談 つまり「事務長を外部にアウトソーシングしている」イメージに近いですね。小規模クリニックでは専任の事務長を雇うリソースがありませんから、地域で共有する感覚です。 ってことで、事務長なんかクリニックから出ていきやがれ!って訳です。 なぜコンサルを導入したのか ―院長の時間を取り戻すために 数字を具体的に出すのは難しいのですが、 院長の時間を減らせる ことが最大のメリットです。 例えば: 財務三表を読み込み、他のクリニックや平均値と比較 → 2〜3時間 行政資料の読み込み → 60〜90分/月 これらを一人でやると、あっという間に半日が消えます。しかも臨床に集中すべき時間が削られていく。ここをアウト...

クリニックはなぜ時間外診療をしてくれないのか?

イメージ
「あと10分待ってくれたら、着くので開けていてくれませんか?」 「18時半になら行けるのですが…」 「(17:30に)あと15分でつきます。(着かない)」 当院にもこんなケースは時々あります。受診したい気持ちや困っていることは実際分かっていて対応したい気持ちもあるのですが…。 病院における「時間外診療」は、多くの人にとってありがたい仕組みです。特に急な発熱やケガにも対応してもらえます。しかし、ほとんどのクリニックは時間厳守で閉まってしまいます。 なんて優しくない病院って言われそうですが、これって制度設計と報酬のバランスが崩れているために「割に合わない仕組み」になっているのです。 一般の方々から見れば、「仕事が忙しいから大変」「医療は公共サービスだから夜でも空いていてほしい」という感覚があるでしょう。ですが、医療も人が働いて成り立つサービスです。人件費、家庭生活、疲労の持ち越し――。これらの現実を抜きに「時間外を開けろ」と言うのは、いわばスタッフにサービス残業を強要するのと同じことになってしまいます。 以下では、実際の人件費や診療報酬の数字を使いながら、なぜ時間外受付が採算に合わないのかを具体的に見てみましょう。 1.時間外の「残業代」を数値で考える 医療従事者を時間外に残すには当然コストがかかります。ここでは仮に医師1名・看護師1名・事務1名が残る場合の人件費を考えます。 最新の 厚生労働省統計(e-stat) によると、全国平均で概算すると以下の時給水準です。 医師:約4,500円/時 看護師:約2,000円/時 医療事務:約1,200円/時 合計で 7,700 円/時 。これが、最低限かかる時間外労働の「給与コスト」です。 そして残業代としては通常25%割増が求められます。すなわち、 7,700円 × 25% ≒ 2,000円/時 が上乗せされる形になります。 では、時間外診療で医療機関に入るお金はどうでしょうか。現在の診療報酬体系では、時間外加算は 850円 に過ぎません。つまり、患者1人あたり850円増えるだけ。 単純計算すると、2,000円の割増を回収するには 最低2.2人の患者 が1時間に来院しなければ赤字です。もしくは受付、診察、検査、説明、処方、会計の全てを25分以内で済ませる必要があります。(本当はスタッ...

介護保険制度と地域連携を学ぶ院内勉強会レポート 2025年8月8日 江口医院 院内勉強会より

イメージ
1. はじめに ― 医療と介護の接点 「医療も大切だけど、介護は生活直結であり、QOLを上げるもの。医療があっても、介護がなければ人としての尊厳がない。」 これは、今回の院内勉強会で共有した当院と言うより私の思いです。点滴や酸素があっても、ヒゲぼうぼうで、髪がベタベタで、肌はカサカサ、オムツは変えられず臭く、部屋も汚い。医療が不要とはいいませんが、介護というより基本的なケアって本当に大切なものです。 医療は病気を治すための手段ですが、介護は暮らしそのものを支える土台です。病状が安定していても、生活の場で支えがなければ、日々の尊厳や安心は保てません。だからこそ、医療と介護の両輪で支える姿勢が大切だと考えています。 2025年8月8日、江口医院では「介護保険」をテーマに院内勉強会を行いました。 背景には、外来や在宅で患者さんと接する中で、「介護保険の仕組みがわかりにくい」という声が多かったことがあります。制度や申請の流れ、医療保険との使い分け、そして現場での連携の実際を整理することが目的です。 事前のアンケート調査を元にFAQを作成しました。各ホームページやサイトを複数確認し、確度を高めつつ資料を作成しました。その一部を共有したいと思います。 (引用:漫画「GIANT KILLING」) 2. 介護保険の基本構造とポイント 介護保険制度は、介護が必要になった高齢者やその家族を、社会全体で支えるための公的保険制度です。 財源は40歳以上の国民から徴収される介護保険料と税金がほぼ半分ずつ。運営主体(保険者)は市区町村です。 サービス利用には、まず市区町村に「要介護認定」を申請します。認定区分は大きく分けて「要支援1・2」と「要介護1〜5」。 要介護認定を受けるとケアマネジャーがつき、ケアプランを作成しながら必要なサービスを調整します。 要支援の場合は、地域包括支援センターが窓口となり、予防ケアや軽度の支援を中心に行います。 この違いは、支援の目的が「生活の維持」か「自立支援・予防」かにあります。現場で混同されやすい部分ですが、制度設計上は明確に分かれています。 3. 地域包括支援センターの役割 地域包括支援センターは、市区町村ごとに設置された高齢者の総合相談窓口です。法律上の正式名称は全国共通ですが、自治体によっては「高齢者支援...

悪人

イメージ
本当はサプライチェーンマネジメントの記事を書いていたのですが、進まない進まない。Geminiさんと一緒に学びましたが、難しい難しい。一休み一休み。 ってことで、今週末は選挙!3連休の真ん中にして投票率を下げている!!ワタクシ、土曜日も月曜日も仕事なので1連休ですからお気になされず。 さて、ネットを開けば、「医者は儲けすぎだ」「医療費が国家財政を圧迫している」といった言葉が並びます。(財務省さん、感情的にしすぎですよ?)選挙の季節には、候補者が「社会保障費が財政を食い潰している」「医療費の無駄を削減しなければ日本が沈む」と議論がネットで拡散されているのを、昼ご飯をかきこみながら見ております。 けれど、医療の現場は、そうした光景とは対照的です。私たちは、日々、患者さんの身体と生活、感情に寄り添い、どうすればその人らしく過ごせるかを考え続けています。便利なシステムも人工知能も、最後に患者のそばにいるのは人間の手と声です。夜間に呼び出されても、ターミナルの現場でも、誰かの人生の傍らに立つ仕事。それが医療職、介護職です。 なのに、社会の一部からは、まるで「無駄遣いの元凶」のように語られるのはいささか辛い。鈍感力が強い私が答えるので、共感力の高い医療関係はより辛いのでは?と思いを馳せております。そのたびに、真面目に働いている人たちが、何かを失っていく気がしてなりません。いや、現実的に真面目に働いている看護師さん介護士さんたちは、失望して現場を離れております。 (引用:漫画「鋼の錬金術師」) 「賃上げしても社会保険料で消える」は本当か? 近年、「給料が上がっても社会保険料が全部持っていく」といった声が強まっています。2024年4月には『日本経済新聞』が「賃上げ、社会保険料に消える」と報じ、社会に大きな波紋を呼びました。 このフレーズは、生活実感に寄り添うようでいて、実際には誤解を招く表現です。総務省の 「家計調査」 によれば、39歳未満の勤労世帯では、2018年から2024年の6年間で月額社会保険料は約6,200円増加しましたが、同期間に世帯主収入は33,341円増加しています。保険料の増加はその18.6%にとどまり、収入の大半はきちんと可処分所得として手元に残っているのです。(経理・総務をしている方なら当然ご存知ですが、保険料率が18.3%だからですね) 会社が社会...