インフルエンザ診断後の大切なケアポイント


このブログでは、インフルエンザについての基本情報、治療、療養方法、そして感染予防についてお伝えします。

1. 十分な休養を取る

インフルエンザは体力を消耗する病気です。無理をすると症状が長引いたり、悪化する恐れがあります。ベッドでの安静を心がけ、体を温める。仕事や学校を休むことを優先する。

2. 水分補給を忘れない

発熱や発汗による脱水を防ぐため、こまめな水分補給が大切です。水、スポーツドリンク、経口補水液などを適宜摂取する。喉が渇いていなくても、少量ずつ頻回に飲むことを意識する。

3. 栄養バランスの良い食事を摂る

免疫力の維持・回復を助けるため、バランスの取れた食事が推奨されます。消化の良いもの(お粥、スープ、ヨーグルトなど)を選ぶ。食欲がないときは無理せず、少量ずつ食べる。

4. 体力回復をサポートする生活習慣

症状が治まった後も、数日は激しい運動を控える。ビタミンやミネラルを豊富に含む食品(野菜、果物など)を摂る。高齢の方はリハビリも大切です。

インフルエンザの症状と持続期間

インフルエンザの主な症状には、高熱、倦怠感、頭痛、筋肉痛、咳、喉の痛み、鼻水などがあります。症状の持続期間は以下の通りです:(タミフル海外第三層試験を参照)

タミフルを内服した場合:平均78.2時間で症状が軽快します(95%信頼区間:72-88時間)。

内服しなかった場合:平均112.5時間で症状が軽快します(95%信頼区間:101.5-119.9時間)。

なお、早期に治療を開始するほど効果が期待できます。

抗インフルエンザ薬について

インフルエンザの治療として、当院で処方しているのは以下の3種類の薬です。どの薬も効果に大きな差はありませんが、特徴があります。

  1. タミフル(経口薬)
    内服タイプ。1日2回、5日間服用。子どもから高齢者まで幅広く使用されています。

  2. ゾフルーザ(経口薬)
    1回の服用で済む簡便さが特徴。薬価は他の薬よりも高め。

  3. イナビル(吸入薬)
    1回の吸入で完結。吸入が苦手な方には向いていません。

当院では、経口摂取ができない患者様向けの点滴薬ラピアクタは取り扱っておりません。

療養期間について

インフルエンザの療養期間は、“発症翌日から5日間”、かつ“解熱後2日間”が目安とされています。ただし、以下の点にご注意ください:

  • 感染力について:症状が出はじめ自体が曖昧なこともあり、5日経過してもウイルスを排出している人もいます。そのため、職場復帰後も2日前後は感染対策を続けてください。

  • 会社勤めの方へ:法的には出勤可能ですが、職場での感染対策の方針に従ってください。

  • 症状の個人差:症状がゆっくり発症する方もいますので、療養期間は体調に合わせて柔軟に調整しましょう。

自宅での感染対策

  1. 共用するものを減らす:食器やタオルは個別に使用してください。

  2. 定期的な換気:1~2時間おきに窓を開け、空気の流れを作りましょう。

  3. 密接な接触を避ける:特に子どもや高齢者との直接的な接触は控えましょう。

  4. 食事を一緒に取らない:食事の際は別の場所や時間をずらして取るよう心がけましょう。

また、患者さんご本人には必ずマスクを着用していただき、飛沫の拡散を防ぎましょう。

インフルエンザワクチンの重要性

インフルエンザワクチンを接種すると、“インフルエンザの発症リスクが約50~60%減少”するとされています。また、重症化リスクも軽減されます。“入院リスクが最大で80%減少”するという研究結果も報告されています。この効果は、個人だけでなく周囲の方々を守ることにもつながります。

よくある質問

  1. インフルエンザ抗原検査の精度について

    • 抗原検査の感度は発症後の時間経過によって異なります。

      • 発症後12時間以内:感度約50%。

      • 発症後24-48時間:感度約70-90%。

      • 発症後72時間以降:感度約95%。

    • 初期段階で陰性でも、症状が続く場合には再検査を検討することが重要です。

  2. 生理食塩水の点滴の効果について

    • 生理食塩水の点滴は脱水症状の緩和には有効ですが、インフルエンザそのものを治す効果はありません。十分な休養と水分摂取が重要です。

  3. 職場の感染対策を抗原検査を行う際の注意点

    • 検査のタイミングや感度の問題から、感染力があるのに陰性となる場合があります。職場全体の感染対策(換気、手洗い、マスク着用、食事環境の整備)が不可欠です。

  4. みなし陽性とは?

    • 症状や流行状況に基づいて診断を下すことを指します。

    • 例:発症率が高い地域では、抗原検査が陰性でも陽性の可能性が高い。


ベイズの定理で検査の精度が感度60%、特異度100%、検査前確率(陽性率)80%の場合

検査で陰性の結果が出た場合の、「本当の陽性率」を計算すると

検査で陰性の割合 = (1 - 感度) × 検査前確率 + 特異度 × (1 - 検査前確率)= (1 - 0.6) × 0.8 + 1 × (1 - 0.8) = 0.32 + 0.2 = 0.52

本当の陰性率 = 特異度 × (1 - 検査前確率) ÷ 検査で陰性の割合 = 0.2 ÷ 0.52 = 38%

よって、陰性の結果が出ても、本当の陽性率は約38%です。つまり、検査結果は流行状況や症状を含めて総合的に判断する必要があります。

熱性せん妄に関する注意事項(10歳代のお子様をお持ちの保護者向け)

インフルエンザに罹患したお子様には、タミフルを服用している場合でも、していない場合でも、以下の点にご注意いただき、様子をよく観察してください。

1. 異常行動に注意する

インフルエンザは発熱に伴い、以下のような異常行動が現れることがあります。これらは多くの場合、一時的な「熱性せん妄」によるものです

  • 意識がぼんやりする、または一時的に意識を失う。

  • うわごとを言う、興奮する。

  • 普段と違う突飛な行動をとる(例:突然家から飛び出すなど)。

  • 幻視や妄想を訴える。

  • けいれんを起こす。

「熱性せん妄」はインフルエンザに限らず、発熱を伴うさまざまな病気で見られる症状です。最近の研究では、インフルエンザに罹った子どもの約1.5%が「熱性せん妄」を経験すると報告されています。一方で、「熱性せん妄」がインフルエンザ脳症や脳炎の初期症状である可能性も否定できません。そのため、異常行動が見られた場合は、速やかに医療機関へ相談してください。

2. 少なくとも2日間は一人にしない

インフルエンザに感染したお子様を少なくとも2日間は一人にしないようにしましょう。これにより、異常行動による転倒や事故やインフルエンザ脳症や脳炎の初期症状の見逃しのようなリスクを軽減できます。

保護者の方が付き添い、様子を見守ることで早期発見と対応が可能となります。お子様の安全と健康を守るため、十分な観察をお願いします。

コメント

人気のブログは以下の通りです

新型コロナワクチン接種の最新情報:効果・副反応・費用について【2024年最新版】

ドクターサロン10月号の注目ポイントと当院の取り組み:高齢認知症患者と骨粗鬆症治療に対するアプローチ

第52回佐賀総合診療ケースカンファレンス:知っておきたい外来呼吸器感染症の最新の話題

ケアマネージャーとの連携を考える:院内勉強会からの学び

佐賀県緩和ケア地域連携カンファレンスに参加して(その1) ACP(アドバンス・ケア・プランニング)の重要性とその進め方

佐賀市の医療現状と江口医院の取り組み - 地域医療構想に基づいた効率的な医療提供とは?

地域医療と高齢化社会における課題と解決策:プライマリーケア連合学会佐賀県支部第9回学術集会の講演から