佐賀県緩和ケア地域連携カンファレンスに参加して(その2) 在宅医療と緩和ケアの両立
在宅医療の特徴と緩和ケア病棟の強み
在宅医療では、患者や家族の意向に沿って、治療と緩和ケアを柔軟に組み合わせて提供できます。一方で、病棟の緩和ケアでは原則治療は行えません。しかし、次のような強みがあります。
- 看護師がすぐに対応できる(5〜10分以内)
緩和ケア病棟は7対1という看護配置基準となっています。比較的恵まれた配置基準のため速やかな対応をしてもらえることが多いです。
(余談ですが、ナースコールを押しても来てくれない問題の8割は看護配置基準にあると思います)
在宅医療も依頼があれば勿論訪問してくれますが、どうしても迅速性は病棟の方が早いです。 - 硬膜外麻酔、脊椎麻酔やブロック注射など、痛みを取るための追加オプションがある
麻酔科、ペインの専門の先生方がおられますので、在宅医療にはない選択肢があります。疼痛や倦怠感、麻薬の副作用が通常の緩和ケアで対応しにくい場合は緩和ケア病棟は良い選択肢です。 - 環境が整っているため、体を支えるケアがしやすい
ご自宅だと稀に布団のこともあります。シャワーや入浴の補助は自宅でも訪問看護師でも可能ですが、機械浴レベルになると緩和ケア病棟でないと無理ですね。
患者が感じる(と思う)在宅医療と病棟の違い
トイレ問題
在宅医療では訪問看護師が1日2~3回ほど訪れるケースが多く、トイレのタイミングが合わないことがあります。これに対し、病棟では看護師のサポートがあるため、体力が落ちてもオムツに頼らずトイレに行ける環境が整っています。
つまり、自宅に居たいなら比較的早期にオムツケアになります。病棟にいると介助で立位が保てている間はトイレにいけます。ただし、病棟にいるとトイレの順番待ちも起こるので注意が必要です。お風呂の問題
病棟ではお風呂の順番や曜日、入浴時間が決まっており、自由に入浴できない点がデメリットです。在宅では昼でも夜でも入浴が可能ですし、急がされずにのんびりと入ることができるのがメリットです。面会の自由度
在宅医療では、家族が仕事終わりなど自由な時間に会いに行けるのが強みです。病棟では面会時間が決まっているため、特に小さな子供(孫など)との面会が難しい場合があります。
まとめ
ACPの進め方や在宅医療・緩和ケアを通して大切にしているのは、患者の価値観を尊重し、家族と共に最適な選択肢を見つけることです。患者や家族が抱える悩みや要望に耳を傾け、一つひとつ丁寧にサポートすることが求められます。当院でも緩和ケア病棟にゆくゆく入りたいが、自宅にいる間は訪問診療を希望したいと療養される患者さんも多いですね。早めに入院される方もおられれば、ぎりぎりまで自宅にいる方もおられますし、入院を希望していたけど自宅で最後まですごされる方もおられます。
メリット、デメリット、医療・介護の援助の限界などを説明したうえで、「よかごと(好きなように)」してもらい、それを支えられるクリニックでありたいと思います。
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