「Palliative Care Research2024年 第19巻3号」最新号?から得た知見をもとに、江口医院が目指す緩和ケアの未来

当院では、がんをはじめとした治癒が難しい疾患を抱える患者様のQOL(生活の質)向上を目指し、緩和ケアの充実に努めています。

今回は、緩和ケア分野の学術雑誌である「Palliative Care Research(緩和ケアリサーチ)」の最新号ではない(2024年 第19巻3号)から、医療現場において特に参考になるトピックをいくつかご紹介いたします。最新号を読み込むのが常だったのですが失念しておりました。最新号4号が既に発刊されていますので、次のトピックは少しお待ち下さい。

https://www.jstage.jst.go.jp/browse/jspm/19/3/_contents/-char/ja

がんや慢性疾患の診療に従事されている医療従事者の方や、患者様のケアに携わるご家族の皆様にとって、役立つ情報が詰まっています。

Palliative Care Research(緩和ケアリサーチ)とは?

「Palliative Care Research」は、がんや慢性疾患を抱える患者さんの生活の質を向上させることを目的に、緩和医療を発展させるための研究や実践、教育を促進する学術雑誌です。この学会は、多分野の専門家が連携し、最前線での緩和医療の発展に貢献しています。緩和ケアが社会的にも求められる現在、当院でも老衰、臓器障害、悪性腫瘍の患者様に対して、こうした研究成果を実臨床に応用しています。

最新号からの注目トピック

1. 看護師のエンドオブライフケア実践の評価尺度

緩和ケアでは、患者様やご家族が終末期をどのように過ごされるかが大きなテーマです。最新号では、看護師が患者様のQOL向上に寄り添うための新しい評価尺度が開発され、終末期ケアの実践に役立つことが期待されています。

特に図2の因子分析結果は、終末期に携わる看護師が行うべきリストとして使用できると思います。ただし、具体的な方法までは言及されていません。どうやってこの目標を達成するかは追加研究が必要ですね。



エンドオブライフケアは、多職種の連携が不可欠であり、当院でもこのような知見を共有しながらチーム全体でサポート体制を整えています。

2. 緩和ケア病棟でのソーシャルワーカーの役割

緩和ケア病棟において、地域連携室、ソーシャルワーカーが果たす役割は非常に大きく、患者様とそのご家族が抱える悩みや問題に寄り添います。今回の研究では、34項目にわたる支援内容が評価されています。

個人の経験上はかなりハイレベルなものが求められていると思います。ソーシャルワーカーは入退院支援が主な業務となっている中、「遺族会」「自助グループ」への支援まで行うとすると、相応のマンパワー、人材が求められることとなると思います。

3. 栄養評価の新たな指標

緩和ケアでは栄養管理が大きな課題です。上腕三頭筋皮下脂肪厚や上腕筋周囲径を用いた栄養評価方法により、特に終末期のがん患者様における予後予測の精度が向上する可能性が示されています。

昔修行を積んでいた祐愛会織田病院ではNST委員会の委員長を務めていたのを思い出しました。当時から上腕周囲径や脂肪厚などを測定しながら、介入すべき患者さんを見定めていました。懐かしいですね。日常的に栄養管理を行う当院としても、今後の栄養ケアに積極的に取り入れていきたいと考えています。

4. 鍼灸の効果と緩和ケア

日本では、緩和ケアにおける鍼灸療法が広く導入されているわけではありませんが、最新号の研究では鍼灸が痛みの管理に寄与する可能性が示されています。鎮痛剤と併用することで約3割の患者様で疼痛の改善が見られたとのことで、今後の治療の選択肢として注目されています。しかし、疼痛の改善の程度までは言及されていませんし、RCT研究でもないので研究の質としては低いのに注意が必要です。東洋医学的アプローチも、緩和ケアの重要な一部としてさらなる発展が期待されています。

5. 在宅医療での腹水ドレナージの新しい手法

在宅緩和ケアにおいても、新しい手法が研究されており、腹水ドレナージの効率的な方法についても掲載されていました。短時間での排液が安全に実施できることが確認されており、今後の在宅ケアでの応用が期待されます。海外では吸引キットもあるようで、1Lを5分で排液しているとのこと。安全面や衛生面での十分な検討はまだですが、吸引器による排水も一つの方法なのかもしれませんね。患者様の負担を軽減し、QOLを向上させるために、当院でも新しい技術や研究を積極的に取り入れています。

以下の画像は海外では保険収載されている排液ボトルの一つです。



江口医院が目指す緩和ケアの未来

当院では、最新の研究結果や臨床経験を積極的に取り入れ、緩和ケアの質向上に取り組んでいます。がんや慢性疾患に苦しむ患者様とそのご家族が、より良い生活を送れるよう、専門的なサポートを提供し続けます。当院で対応が困難な場合は、好生館緩和ケア病棟や、なゆたの森緩和ケア病棟と連携しつつ対応させて頂いています。緩和ケアにご興味のある方やサポートを必要とされている方は、どうぞお気軽にご相談ください。

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