地域医療と高齢化社会における課題と解決策:プライマリーケア連合学会佐賀県支部第9回学術集会の講演から

  • 高齢化社会と内科医の課題

今回のプライマリーケア連合学会佐賀県支部の講演では、高齢化社会における地域医療の課題について議論が行われました。町立太良病院の上通年生からは、特に内科医の高齢化が進む中、現場では「訪問診療をしてくれる医師」が求められているといいます。多くの医師が70歳を超えても外来診療を続けていますが、訪問診療では患者宅での物理的負担も加わるため、体力が必要です。高齢の医師が家庭に訪問し、段差のある玄関や布団に座るなどの対応を強いられることが、現場での課題とされています。オンライン診療は遠隔地での医療支援手段として一部期待していましたが、実際の現場ニーズとしては訪問診療が圧倒的に優先されることがわかりました。

  • 医療人材の派遣とキャリア形成の工夫

県の医務課前山氏からも、人材派遣による地域医療の支援に関する発表がありました。特に、地域の病院に医師を派遣し、その病院の医師がさらにプライマリケアに関わるという「屋根瓦方式」は、医師のキャリア形成、キャリアギャップの補完、移動コストの両面でメリットがある感じました。しかし、総合診療医や家庭医療のスキルを持つ医師を確保すること自体が困難であることや、女性の医師が増えてきて保育園に預けた後に地方に行くと、そもそも業務時間が十分に取れないことを課題として上げられていました。ということで、移動コストを軽減する方法として、自動運転車の活用も一つの解決策になるのではないかと考えました。医師が僻地医療に従事する際、自動運転車があれば、運転に伴う疲労を軽減し、移動中の休息が可能となります。例えば、キャンピングカーのような設備を備えた車両や、寝台列車のような快適な移動手段があれば、医師がリラックスした状態で現場に到着し、診療に集中することができるでしょう。

  • フィッシャー症候群の症例と迅速な診断

学術集会の最後には、フィッシャー症候群の症例に関するカンファレンスが行われました。この症例では、患者が昼間に眼科や耳鼻科で受診し異常が見られなかったにもかかわらず、夕方には救急を受診するというスピード感が印象的でした。感染症であれば、相当進行が早いものと予測されます。自己免疫疾患、薬物による影響などが疑われ、迅速な診断が必要とされる状況です。また、自覚症状と他覚症状、身体所見のギャップも特徴的に感じました。

  • ケースカンファレンスと診断技術の重要性

フィッシャー症候群の症例を通して診断技術についても議論され、「デュアルプロセスセオリー」「Vindicate-P」「解剖学的診断と病因診断、暫定的臨床診断に到達する3段階診断法(3 Step Diagnosis)」が紹介されました。これらの診断技術は、特にCTやMRIが使用できないクリニックにおいて、症例を正確に診断するための貴重なスキルです。改めてこの診断技術を復習できたことは、知識を再確認する良い機会となりました。個人的にこれに追加したいのは「治療反応」ですね。

まとめ

今回の講演では、地域医療における高齢化や医療人材の派遣とキャリア形成の課題、移動手段の効率化など、今後の医療のあり方について具体的な提案が数多く示されました。僻地医療におけるICTの活用や自動運転車の導入など、さまざまな手段を駆使して、医療の質向上と効率化を目指す取り組みが求められています。

コメント

人気のブログは以下の通りです

新型コロナワクチン接種の最新情報:効果・副反応・費用について【2024年最新版】

ドクターサロン10月号の注目ポイントと当院の取り組み:高齢認知症患者と骨粗鬆症治療に対するアプローチ

第52回佐賀総合診療ケースカンファレンス:知っておきたい外来呼吸器感染症の最新の話題

ケアマネージャーとの連携を考える:院内勉強会からの学び

佐賀県緩和ケア地域連携カンファレンスに参加して(その1) ACP(アドバンス・ケア・プランニング)の重要性とその進め方

佐賀市の医療現状と江口医院の取り組み - 地域医療構想に基づいた効率的な医療提供とは?

インフルエンザ診断後の大切なケアポイント

がん患者さんの質問促進リストと意思決定支援ガイドのご紹介